富士フイルム「カリスマ」後に背負う重責と課題 写真フィルム技術生かし、ヘルスケア成長狙う

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20年にわたって富士フイルムを率いてきた古森重隆氏(右)が退き、後藤禎一氏(左)が後任の社長・CEOに就く(撮影:大澤誠)

富士フイルムを20年にわたって率いてきた「カリスマ」、古森重隆氏が6月に会長兼CEOの職を退く。

中核事業を維持しつつ、同時にイノベーションを起こす、成熟企業の「両利きの経営」のお手本とされる富士フイルムがここに至るまでは紆余曲折があった。

2005年3月期に当時主力の写真フィルム関連事業が赤字に転落し、「本業消失の危機」に陥る。CEOの古森氏は「第二の創業」を掲げて改革の大ナタをふるい、目をつけたのが、写真フィルム製造で培ってきた技術が生かせるヘルスケア領域だった。

ヘルスケア進出で経営が安定

古森氏が就任した2000年当時、売上高の6割、営業利益の3分の2を写真フィルム関連事業が占めていたが、ヘルスケア部門への進出に成功したことで経営が安定した。2兆円規模の売上高や1500億円程度の営業利益規模を大きく変えることなく、事業構造を大きく入れ替えた。

新型コロナのため、2021年3月期の営業利益は対前年11%減の1654億円となった。キヤノンなど競合他社に比べてコロナ影響を軽微に抑えられそうだ。構造改革で事業が多角化し、コロナ影響を受けづらいヘルスケア事業を収益源に育て上げたためだ。古森前会長は3月末の社長交代会見で、「コロナ禍でもしなやかに対応できる強さが磨かれてきたと感じている。後進に託す適切な時期がきた」と語った。

古森氏の後を継ぐのは、医療機器事業に長年携わってきた取締役であり、メディカルシステム事業部長を務める後藤禎一氏だ。

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大竹 麗子 東洋経済 記者

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おおたけ・れいこ

1995年東京都生まれ。大学院では大学自治を中心に思想史、教育史を専攻。趣味は、スポーツ応援と高校野球、近代文学など。

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