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アマゾンの「データ分析」はここまで徹底する 礎を築いたキーマンが著書で明かす裏側

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おもしろいのは、こうした変遷を経たのちのこと。すなわち現代におけるプライバシーのあり方だ。インターネットが社会生活を送るうえで欠かすことのできないツールとなるなか、プライバシーに関する考え方も大きく変化していったということである。

われわれは無料かつ迅速に家族、親友、見知らぬ他人と交流できる見返りに、進んで人生を「公開」するようになった。プライバシーという概念を構築し、それを解体するというプロセスが、すべてほんの二世紀ほどのあいだに起きた。人類史のなかでは瞬きするほどの時間である。過去100年にわたり、われわれはプライバシーを大切にしてきたが、そろそろそれが幻想にすぎないことを認めるべきだ。われわれは自らの関心、帰属意識、コミュニケーションを管理するためのツールを望んでいる。(78ページより)

「匿名性は、民主主義の前提条件などではない」

いまや時代は変わったのだと著者はいう。そして、「匿名性は、民主主義の前提条件などではない」とも。これまで私たちを縛りつけてきた「プライバシーの幻想」に浸り、過去のルールが未来もわれわれを守ってくれると期待するのではなく、「今日の状況と未来の可能性を見すえた新たなルール」をつくるほうがいいという考え方だ。

何が公開情報で、何がプライベートな情報かといった線引きをしたり、データを囲い込む(あるいは遮断する)ための壁を作ったりするのに多大な労力を費やすより、われわれが自分らしくあるには何が必要か、という点に目を向けよう。そうすることでデータ会社を最大限に生かすとともに、データを共有することの潜在的なメリットとデメリットのバランスを考えられるようになる。(79ページより)
『アマゾノミクス データ・サイエンティストはこう考える』(文藝春秋)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

正直なところ、この主張を目にしたときには、硬い頭をガツンと叩かれたような気がした。たしかにそのとおりで、変化し続ける時代には、自分自身もまたバージョン・アップを繰り返していく必要があるはずだからだ。

さて、前半においてこのようにデータのあり方と私たちの姿勢を提示したうえで、後半は話題が経済から医療にまで広がっていく。400ページにも及ぼうという大作なので読むには時間がかかるかもしれないが、読みごたえは充分だ。

最後に、第7章2節のラストを飾るフレーズを引用しておこう。ここでのテーマ自体は「医療・公平さ」だが、この一文は、本書全体を締めるという意味においても重要だと感じるからだ。

われわれはいま、難しい判断にともなうトレードオフを定量化する能力、自らの価値観を明確に示す能力、結果を測定する能力を手に入れた。そうなった以上は、何が公正か、公正ではないか、選択しなければならない。もはや無視を決め込むことはできない。また成り行き任せにする必要もない、透明性と主体性の権利を行使しながら、この世のありとあらゆるデータを生成していくなかで、われわれの、われわれによるデータは、われわれのためのデータになる。(338ページより)

データやそこに派生するコミュニケーションのあり方を探るためにも、ぜひ読んでおきたい一冊である。

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