だが、「組織を変更しなくてもうまくつなげられるのが日本のお家芸。チームでやるというのが、われわれが一番頑張っている部分です」。日立はマイクロソフトやグーグルと協力関係にあるほか、必要な技術を持つ企業を買収することもあるが、さらに自社グループ内のリソースを有効活用できるという点も強みというわけだ。
シーメンスの鉄道向けデジタルプラットフォームは4つにパッケージ化され、「型」を意識したアプローチを取るのに対し、HMAXは顧客によって取り組み内容が大きく異なる。イノトランスの会場では高速列車「ETR1000」の台車に取り付けられたセンサーが公開されたが、日本における東武鉄道や京王電鉄のHMAX導入事例はこれとはまったく違う。日本の鉄道会社の取材を通じて感じたのは、現場の課題をすくい上げ、1つずつ解決し、そのソリューションを集めたものがHMAXであるということだ。つまり、HMAXには「型」がない。顧客の要望を踏まえて構築するオーダーメイド型の「柔軟性」を重視するという特性をあらためて感じた。
両社が連携して受注した案件も
イノトランスの会期中、オーストリア連邦鉄道(ÖBB)は信号デジタル化プロジェクトのサプライヤーとして、日立とシーメンスを指名したと発表した。契約額は両社とも13億ユーロ(約2300億円)、合わせて26億ユーロ(約4600億円)という大型案件だ。両社はライバル関係にあるが、こうした大型案件では連携して受注することも少なくない。
鉄道から得られる膨大なデータは重要な資産である。今は各サプライヤーがデータ取得や解析で競い合っている状況だが、いずれ、システム間でデータをやり取りするためのインターフェースや相互運用性の標準化が進み、必要なデータ仕様についても議論が進むようになれば、サプライヤー間でデータが共有され、よりよいソリューション提供につながるという未来が見えてくる。
デジタル領域では自社囲い込みの競争が続く一方で、ÖBBの事例のような協調や標準化が求められることもある。両社がどのように競争と協調を両立させていくのかが今後の焦点だ。

