深田監督は奈義町について、「東京で生まれ育った自分にとってもどこか懐かしさがありました」と語ります。
「平野が広がっていて見通しがよくて、関東で目にする景色に近いものがあるんです。一方で現代的で強烈に個性的な美術館があります。人口約5400人の自然豊かな町の中で異彩を放っていて、これが奈義町固有のユニークな景観を作り出していました」
町に響く「砲声」と古い風習が入り混じる不思議
さて、津山市から奈義町に入ると最初に目に飛び込んでくるのが、日本原地区にある自衛隊の駐屯地です。
「はじめて訪れた日に戦車とすれ違い、とても驚きましたが、日常的に砲声が聞こえてくる環境です。こうした奈義町のいろんな側面を知るうちに、この町が抱える複雑さについて考えるようになりました」(深田監督)
この「砲声」は本作の全編にわたって登場しますが、自衛隊のある風景が町に溶け込んでいて、駐屯地があることで外から町に転入してくる人もいる日常が特徴的だった、といいます。
実は奈義町は、子育て支援が充実していることが特徴。岡山県北部地域は全体的に人口減少という課題を抱えており、全国の合計特殊出生率は1.14(25年)と減少の一途を辿る中、奈義町では2.30程度を維持しています(「第2回全国子育て応援会議(25年)」資料より)。
高校卒業まで医療費は全額無料で、在宅育児支援金や高校就学支援金などを支給。子育てアドバイザーが常駐、無料で利用できる「なぎチャイルドホーム」などの地域の見守り、子育て中の母親が子どもと一緒に働けるスペースを確保した「奈義しごとえん」などの就労支援も充実しています。そのため、「奇跡のまち」と呼ばれ、全国の自治体や省庁から視察が相次いでいます。
移住希望者が増加する一方、「空き家活用」が追いつかないという独自の問題も生まれているほどです。


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