―――その迷いは、年々強くなっていると感じますか。
相佐:感じますね。ここ数年、中学受験はかなり過熱していました。周囲がこぞって受験する環境では、わが子に本当に合っているのかを立ち止まって考える前に、「みんながやっているから」と塾に通い始めることもあります。走り出してから、本人も保護者も苦しくなってしまうご家庭は少なくありません。
―――「受験すること」が、いつの間にか目的になってしまうわけですね。
相佐:そうです。保護者世代には、中学受験での成功が大学受験、就職、その後の人生の安定につながる、という感覚が強くありました。もちろん、今も中学受験には大きな価値があります。ただ、「この一本に乗れば安心」とは言い切れない時代になり、別の可能性も見ておきたいと考える親御さんが増えているのだと思います。
「今しかできない」体験と「今やらないと間に合わない」焦り
―――保護者の方は、どんな葛藤を抱えているのでしょうか。
相佐:大きく分けると、二つの気持ちの間で揺れています。一つは、「小学生の今しかできない体験をさせたい」。もう一つは、「小学生のうちにやっておかないと、後で取り返しがつかないのではないか」です。
―――どちらも、親としては自然な気持ちですね。
相佐:そうですね。かつて中学受験は、「より確実な未来へのパスポート」に近いものとして捉えられていました。でも今は、難関校に入ればそれだけで安心、とは考えにくくなっています。
受験のために小学生時代の多くを塾で過ごし、合格そのものがゴールになってしまう。それで本当に、子どもの自信や好奇心は育つのか。そこに疑問を持ち、いったん立ち止まるご家庭が増えています。中学受験が悪いのではありません。大切なのは、「この子にとって、中学受験が本当に最善なのか」を考え直すことです。
―――首都圏の中学受験者数は3年続けて微減していますが、2026年も5万2050人と過去40年で4番目に多く、受験率も非常に高い。ブームが終わったというより、受験を当然の前提とせず、ほかの道と比較する家庭が出てきた、と見るほうが実態に近いのかもしれませんね。
相佐:そう思います。受験をやめること自体が目的なのではありません。わが子に合う道を考え直した結果として、別の選択をする。それは、後ろ向きな撤退ではなく、進路設計のやり直しなんです。


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