リハビリの成果も少しずつ現れてきた。
1年前まではベッドを起こしても、両側を枕などで支えていなければ、体が左右どちらかに倒れてしまうほど体幹が弱っていた。今は上半身を起こして日中を過ごせている。一時期はうまく書けなくなった字も戻り、日々の記録付けを継続する。
毎回誰かに頼まなければいけなかったペットボトルのキャップも、ついに自分で開けられるようになった。不慣れを克服しながら食事を作ってくれる夫に対しても、少しずつ手伝えることが増えてきた。
「ベッドのテーブルでできることに限りますが、納豆を混ぜるとか、けっこう腕を使うんです。日常生活の動作がいかに大事かを痛感します」
次にクリアしたいことは「起き上がり」
次にクリアしたいことを尋ねると、「起き上がり」だと教えてくれた。上半身を起こしたら体を横に向け、両方の足を持って動かし、ベッドサイドに腰掛けた姿勢を取れるようになること。
自分で車椅子に移動できるようになるためにも、まずは起き上がりができるようになれたら、と未来を見据えたビジョンを語った。
理不尽さの深淵を見た幸子さんの言葉には、しかし凛とした強さが宿っている。私たちが生きる「当たり前の日常」は、決して誰かに保証されたものではないのだ。
自分は小さな違和感を無視していないだろうか。今日という日を精一杯生きているのだろうか。老いや病に向き合う覚悟のきっかけを与えてくれた彼女の言葉が、私の胸に残っている。


※ログイン後、コメント入力が可能です。