意外なのは、子育て世帯が子乗せ自転車を保有している割合が、全体の3分の1程度ということだ。裏を返せば、3分の2はまだ所有していないことになる。もちろんここには、自動車で子どもの送り迎えをしている、地方在住の家族も含まれている。とはいえ、縮小市場における数少ない成長カテゴリーにおいて、「ギュット」シリーズは、今なお先頭で走り続けている。
「ギュット」が変えてきたもの、変わらないもの
今回の取材を通じて、「ギュット」シリーズが変えてきたものを整理してみたい。
まずは、親の「使いやすさ」を優先して、改革を加えた点が挙げられる。定説だった「前輪22インチ・後輪26インチ」を、「前後輪20インチ」に仕様変更したこと。一部車種においては、ワンタッチで解錠できる「ラクイック」機能や、「押し歩き」するときの電動アシスト機能を追加した。
次に、子どもの「安全性」をより重視した、「子どもファースト」の観点も生まれている。コンビと共同開発したチャイルドシートは、乗車中の衝撃を吸収するほか、強い日差しから子どもを守るサンシェードが追加された。
また、「ギュット」シリーズが成功したことで、社内の開発体制が「担当者である男性目線」から「当事者である女性目線」へと変わっていることは、言うまでもないだろう。
一方で、変えなかったものもある。それは、「安全性を担保する」ことが第一優先であることだ。加えて、国内一貫生産体制を活かして、スピーディーに改良を加えること。価格で勝負するのではなく、「子育て中のパパ・ママの困りごとを解消する」という点でブレないことも、特筆すべき点である。
「機能」は変わり続けても、「判断基準」は変わらない。この軸があったからこそ、子育て世代から圧倒的な支持を得る製品へと育っていったのだろう。
「当初、『売れないんじゃないか……?』と心配してくださった方には、『大丈夫、売れましたよ!』と伝えたいですね」
そう言うと、プロジェクトの発起人である土岩さんは、うれしそうに笑った。
ママ社員たちの雑談から始まった小さなプロジェクトは、業界標準を塗り替え、いまも進化を続けている。次にこの自転車が「変わる」のは、どこだろうか。街で子どもを乗せた「ギュット」とすれ違うときは、少しだけ眺めてみてほしい。その車体には、誰かの「困った」に応えてきた、先輩ママたちの想いが乗せられている。


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