「走行性能は電動アシストのモーターで補える」「安全性はスピード優先で検証を行う」——と、各部署に説明しながらどうにか協力を仰ぎ、プレゼンからわずか9カ月という異例の速さで商品化にこぎつけたのである。
「完敗」「白旗」—売上1位が覆した社内の常識
2011年5月、業界初のモデルとして、前後輪20インチ仕様の「ギュット・ミニ」が発売された。「ギュット」というネーミングは、「パパとママが子どもをギュッと抱きしめる動作」に由来したものだ。
ちなみに、前輪22インチ・後輪26インチの従来モデル「ギュット」と、パパユーザーを意識した前後輪26インチの「ギュット・プラス」も同時期に発売された。
「定番のモデルが一番売れるだろう」
「20インチの新製品をリリースしたところで、すぐには受け入れてもらえないんじゃないか」
発売前、周囲の社員はそう噂していた。だが、蓋を開けてみると「ギュット・ミニ」が断トツで販売台数1位を記録した。
「販売店様には実物を購入してもらうようにしていたので、試乗したお客様に『乗りやすい』と感じてもらった結果、こうした成果が出たのだと思います」(同社 商品企画部 国内商品企画課 松尾秋さん)
実はこの「販売店に実物を購入してもらう」ことは、一筋縄ではいかなかったらしい。当時は年配のオーナーが多く、電動アシスト自転車の取り扱い自体を渋る人が少なくなかった。そこへ登場した「2人子乗せ自転車」という新たなカテゴリーには、否定的な意見が寄せられることもあったらしい。そこで、営業部門が1軒ずつ店舗を回り、「これからは子乗せ自転車が売れる」と説得。商品の良さを販売店に周知し、理解してもらえたことで、お客さんへの販売へとつながっていた。
大ヒットの結果を前に、「売れない」と予想していた男性社員たちは、「完敗」「白旗」と口々に舌を巻いた。さらに、競合他社もこの流れに追随し、のちに前後輪20インチの子乗せ自転車を発売。ママ社員の雑談から生まれた「異例」の自転車は、今や業界の標準モデルとして定着している。
こうして業界のスタンダードを塗り替えた「ギュット・ミニ」だが、発売後も定番の座に安住することなく、年々変化し続けている。後編では、競合より数万円高くても選ばれ続ける理由と、10年越しに実現した新機能の裏側に迫る。


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