きっかけは、例のプレゼンを行う3カ月前のこと。昼休みの社員食堂では、数人の女性社員たちが世間話に花を咲かせていた。家事や子育ての悩みを相談したり、社内情報を共有したりと、次から次へと話題が移っていく。そのうちの1人が何気なく発した言葉から、すべてが始まった。
「ねえ、うちの製品って、本当にお客様に喜んでもらえてるのかな?」
このとき話の種に上がっていたのは、自社で製造している子乗せ自転車についてだ。
「正直……使いづらいと思わない?」
すると、「そうそう!」「わかる!」と堰を切ったように合意の声が重なっていった。
当時、同社が販売していた子乗せ自転車は、「前輪22インチ・後輪26インチ」と車輪の大きさが異なるものだった。一般車で売れ筋だった26インチをベースに、前かご部分にチャイルドシートを載せるため、前輪だけを22インチに小さくしたものだ。「大人が乗る自転車に、子どもの席を後付けする」という発想で作られた製品だったのである。
競合他社も揃って同じモデルを採用しており、この設計は業界のスタンダードとされていた。しかし、子育て経験のある彼女たちにとって、この自転車には明らかなデメリットがあった。それは、のちのち後輪に後付けするチャイルドシートに、子どもを乗せる作業が重労働だったことだ。
15kgの子を毎日持ち上げる…乗せ降ろしの重労働
同社のホームページによると、前に子どもを乗せる「前子乗せ(まえこのせ)」モデルの場合、乗車可能年齢は「1歳以上、4歳未満」とされている。そのため、4歳以上になると後輪に後付けのチャイルドシートを設置し、「後子乗せ(うしろこのせ)」モデルへと転換するのが一般的だった(ちなみに、「後子乗せ」モデルは1歳以上から使用可能とされている)。
一方で、「後子乗せ」モデルに乗車可能な体重は、「8kg以上、24kg以下」とされている。参考までに、こども家庭庁の「令和5年乳幼児身体発育調査」によると、1歳から6歳までの未就学児の平均体重は約15.8kgだそうだ。


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