1つは、8月3日の熊本視察で「撮影隊」を同行させて、BGM入りのプロモーション動画を作成したことだった。内閣が訴えなければならないのは被災地の様子であり、「活躍ぶりを演じる首相の姿」ではないはずだ。
2つ目は、9日に被爆者団体と面会したときだった。長崎原爆被災者協議会の田中重光会長が陳情している様子を不機嫌そうに眺める高市首相の表情を「ニコニコ動画」がとらえ、そのまま配信されたのが炎上した。
3つ目は、15日に全国戦没者追悼式に参加する前に、日本武道館の駐車場から靖国神社に向かって遥拝したことだった。2021年と24年の自民党総裁選挙で公約に入れながら、25年の総裁選で公約から外した靖国参拝はこうして「実現」された。
ただ、そもそも靖国神社への遥拝は森喜朗首相(当時)が00年8月15日に行っている。当時の日本政府は、台湾の李登輝元総統の来日問題を抱えていた。旧田中派が主流だった頃は、日本政府は中国に配慮して李氏の来日を認めなかったが、故・福田赳夫元首相が創設した清和会は台湾と近かった。
そこで森氏は、千鳥ヶ淵戦没者墓苑で献花した後、車に乗り込む前に靖国神社の方向に礼をすることで、参拝に代えようとした。高校の後輩に靖国神社の方向に立ってもらい、それに頭を下げているように見せかけた。さらに車に乗り込む寸前にも、靖国神社に向かって最敬礼した。車が靖国神社の横を走った際にも、車内から会釈している。
一方、高市首相の遥拝は靖国参拝を望む支持層の期待に応えようとしたものだろう。だから、ひっそりではなく、目立つ形で遥拝しなくてはならなかった。「心」ではなく、「形」を優先する姿勢を示す形となった。
青木率80超でも政権安泰とはいえない事情
そして、お盆明けに公表された各社の世論調査では、内閣支持率は6.2ポイント上昇したANNを除いて、ほとんど上昇しなかった。
8月22日と23日に行われた共同通信の調査では、前月から3.5ポイント減の50.2%と、ほぼ半数にまで減少した。21日から23日にかけて行われた読売新聞とNNN(日本ニュースネットワーク)の調査でも、内閣支持率は前月から1ポイント減少の56%とほぼ横ばい。「高市首相が8月5日に大手紙対策として読売新聞の老川祥一主筆を官邸に呼び込んだ」と『週刊文春』に報じられたが、その効果は薄かったようだ。
それでも歴代の内閣と比較すれば、高市政権の内閣支持率は高いといえる。自民党の政党支持率を約20ポイントも上回り、政権の安定性を示す青木率(内閣支持率+自民党支持率で算出。50を下回ると政権運営が厳しくなるとされる)は80以上と驚異的だ。
ただ高市政権の場合、それが必ずしも政権の安定につながるわけではない。党内基盤が強くないからだ。


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