フジの2回目の声明には「男性俳優から、演技する上で、どの範囲の身体的接触であれば問題がないのかについて女性俳優本人に直接確認したいとの申し出があったため、当社プロデューサーは、女性俳優の所属事務所社長も交えた形で協議することを提案」とある。この一文からは、橋本の「事情」に関するプロデューサーの説明が終始あいまいだったことがうかがえる。プライバシーに踏み込む事案で躊躇したのかもしれないが、一連のあいまいさが双方の解釈や受け止め方の違いを広げたと言える。
佐藤が楽屋を訪れて発言した内容や態様については、フジと佐藤事務所で評価が分かれている。気になるのは、4月8日の2度目の訪問について、佐藤が「女性俳優とのわだかまりを解消したいと考えた」と説明していることだ。つまりその時点で、佐藤と橋本の関係はぎくしゃくしていたのだろう。
フジはその前に、橋本が佐藤の距離の近さに不安を感じていることを把握していた。橋本のトラウマも考慮すれば、佐藤が初めて楽屋を訪問した時点で、以後独断で動かないよう対処すべきだっただろう。
文春のダブルスタンダード
2つ目の問題は、フジの情報管理の甘さである。
筆者は7月6日公開の記事(「あまりにも他人事すぎでは?」文春の"佐藤二朗ハラスメント報道"延焼を広げた《フジテレビ声明文》への強烈な違和感)で、文春が1日に配信した記事が日付入りでトラブルを詳細に紹介していることに触れ、「複数の番組スタッフ、そして佐藤、橋本に近い事情をよく知る人物が裏付けのある情報を流している」と指摘した。
長年取材している経験から、報告書のような「記録」を入手していると確信したからだ。フジテレビも、「証拠は握っていますよ」という文春のメッセージを読み取れたはずである。
にもかかわらず、7月2日に出されたフジの1回目の声明は、橋本を擁護し、誹謗中傷を諫める内容に終始し、自社の責任には一切触れないまま、「遺憾」という他人事のような言葉で片付けた。
案の定、8日に配信された第2弾の記事で、フジテレビが5月25日に佐藤の事務所に送った内部文書を、文春が入手していることが明かされた。フジの2回目の声明には、「男性俳優が本件に関する情報を口外する懸念を抱いたことから、5月25日になって、男性俳優の所属事務所に対し、男性俳優が撮影終了後もプライバシーに関する情報の開示、誹謗中傷その他相手方の名誉又は人格を害する言動を行わないよう、文書により申し入れを行いました」とある。
日付が一致することから、フジが佐藤を警戒し、情報を漏らさぬよう申し入れた内部文書が、フジ側から流出し文春の手に渡った可能性が高い。特大ブーメランとしか言いようがない。

