そもそも、考察ドラマの魅力は「没入感」にあるはずだ。例えば、社会現象を巻き起こすほどの圧倒的人気を誇った日曜劇場『VIVANT』は、没入体験の演出を徹底していた。第三者視点だからこそ、見えない部分の想像をかき立てられ、非常に緻密に張り巡らされた伏線を見逃すまいと映像に集中し、あっという間に時間が過ぎていくーー。画面内に余計なノイズがなかったからこそ、誰もがドラマの世界に没入できていたのだろう。
しかし、コメディ要素が随所に散りばめられた『夫婦別姓刑事』では、数分ごとに話の腰を折られ続けるため、ドラマの世界観に没入できない仕組みになっていた。コメディと組み合わせた時点で、ミステリードラマとしての魅力が半減してしまっている。もっと軽い気持ちで楽しめるミステリーを提供したかったのだろうと想像できるものの、シリアスな展開もあるのでただただどっちつかずで終わってしまった印象を受けた。
佐藤二朗さん・橋本愛さんの夫婦としてのシーンを振り返ると
改めて本作を見直してみると、佐藤二朗さん演じる四方田と橋本愛さん演じる鈴木がイチャイチャしているシーンの身体接触の少なさに気づいた。
23歳の歳の差婚という設定や、ハラスメント報道が物議を醸した本作だが、劇中の2人のシーンはほとんどの場合、一定の距離が保たれている。夫婦を描いた作品としては、違和感を覚えるほど、距離が遠いのだ。
なお、四方田夫妻がイチャつくシーンは、主に「家ですごすシーン」か「アメリカンドッグを食べるシーン」の2種類。ハラスメントが起きたシーンではないかと噂されているのは、2人だけで乗っている車内でのシーンだが、車内シーンは座席に座っているためイチャイチャという印象は受けなかった。
推理ドラマ、考察ドラマとしての粗さが気になって気づかなかったのだが、話題になった後で見直してみると、本作には夫婦が触れ合ったり抱き締めたりするシーンはほぼなかったのだ。同じベッドで寝ているシーンですら、一切触れ合う描写はない。
また、本作の特徴でもある「アメリカンドッグを食べるシーン」では、それぞれ椅子に座っているので一定の距離がある。アメリカンドッグを食べるのは「俺が守る」「大事な人」といった愛の言葉をささやくシーンでもあるのだが、そこでもきっちり距離を保っていた。
しかし、2人はテンポの早い会話のキャッチボールによって、画面越しに「新婚夫婦」としての空気感を十分に漂わせていた。もし他のドラマなら、抱きしめる・キスをするといった直接的な演出になるだろう。こうした触れ合う演出をせず、その空気感や会話だけで仲の良い夫婦だと感じさせるのは、2人の俳優としてのスキルが高いからにほかならない。ここは、素直に感心させられた。
夫婦がイチャつくシーンですら接触がなかったのは、ふたりの間で揉め事があったからなのだろう。一視聴者としては、身体接触がなくとも四方田夫妻の仲の良さを感じていたので、プロの仕事のすごさを実感した。
今回の騒動を経て、2人の仕事が今後どうなっていくのか、筆者にはわからない。それでも、役者としてはどちらも高い能力の持ち主であるのは間違いないはずだ。

