実際に接触があってから話し合いをし、レギュレーションを設けたことが、プロデューサーのリスク管理の甘さをうかがわせるが、文春はそのことにはさらっと触れただけで評価を回避し、佐藤の行為を問題として強調している。
得をしたのは文春だけ?
文春は事実についてはしっかり裏を取るが、だからといって中立的に報じるわけではない。事実は1つでも、立場によって違う物語になったとき、文春は情報提供者の視点に立つことが多い。中居正広氏の事案で、文春は被害者女性のケアを担当した佐々木恭子アナウンサーを「3悪人」と実名報道した。フジテレビは文春のやり方が骨身にしみていたはずだ。
さらに、楽屋でのやり取りがハラスメントにあたるかどうかについて、文春の記事と佐藤二朗事務所の説明は異なっている。記事によるとそこにいたのは当事者2人とマネジャー、そしてヘアメイクだけで、番組の基幹スタッフはいなかった。双方からの「見え方」がまったく異なった結果、フジテレビと佐藤側がそれぞれ弁護士や専門家に見解を求め、判断が割れる形になっている。
もしかしたら、フジテレビは佐藤側に「プロデューサー抜きで接触しないよう」申し入れ、佐藤がそれを守らなかったというような事実があるかもしれない。あるいは、楽屋でのやり取りの音声や動画があり、それを元にフジテレビの弁護士が問題ありと判断したかもしれない。しかし現時点では、佐藤側はフジテレビの判断にまったく納得しておらず、橋本愛側も声明文を出し、事態はこじれにこじれている。
お互いが正当性を主張し、対立している状況で、文春があのような報道をした。悪者にされた佐藤側が詳細な反論を展開し、それがSNS世論やメディア報道へのガソリンとなることも容易に想像できる。文春にとってはウハウハだろうが、企業のリスクマネジメントという視点では最悪の結果である。
文春が報道し、佐藤側が反論声明を出した7月3日、佐藤が出演予定だったフジテレビのドラマの降板報道も出た。「文春の報道」がトリガーになって、番組進行に重大な影響が生じているのも、フジテレビの後手後手ぶりを浮き彫りにしている。

