ブラジルの印象を尋ねられて「昔は強かったというイメージです」と答えているものの、その後に「いい選手は揃ってると思うし、難しいゲーム展開になることも予測できるし」と続けている。ブラジルを一方的に貶めるようなことは言っていない。
しかし、そんな彼の発言の中から「昔は強かった」というキャッチーな部分だけが切り取られて、ネットニュースとして報じられ、拡散していった。それがSNSなどの口コミを通じてさらに広がっていき、ブラジル人やブラジルのメディアにも届くようになった。
現在のXでは、人々の感情を煽るような投稿が拡散されやすくなっているうえに、自動翻訳機能も備わっていて、日本語の投稿がポルトガル語に翻訳され、ブラジル人にも伝わってしまう。そこで怒りの声がどんどん大きくなっていった。
ブラジル人が感情的になっているのは、彼らにとってサッカーというスポーツが特別なものだからだ。ワールドカップ最多優勝、ペレをはじめとする数々の名選手、攻撃的で創造的なサッカーの伝統は、ブラジル人のアイデンティティそのものである。そんな彼らにとって「昔は強かった」という発言は、聞き捨てならないほど強い響きを持っているのだ。
強豪国ではあるがその地位は下がっている
その背景には、現在のブラジル代表に対する彼らの潜在的な不満や不安も関係しているかもしれない。一昔前のブラジルは誰もが認める世界一のサッカー大国だった。W杯の優勝争いの常連であり、伝説的な名選手を数多く抱えていた。
しかし、今のブラジル代表にはそこまでの圧倒的な実力はない。ロナウド、ロナウジーニョ、カカのようなバロンドール(世界年間最優秀選手賞)を受賞するほどのレジェンドは長らく出てきていない。2002年大会以降はW杯でも優勝していないし、自国開催の14年を除けばベスト4にすら進出できていない。現在のFIFAランキングは6位。今もサッカーの強豪国であることは変わらないものの、その地位は年々下がっている。

