マンデル=フレミングモデルは、財政政策に対する市場の信認が保たれていることを前提としている。しかし、財政拡大が将来のインフレや財政危機への不安を高める場合には、結果は逆になる。金利上昇と通貨安が同時に起こりうるのだ。
この問題を考えるためには、円安が進行している原因を明らかにする必要がある。これについて、次の2つの見方がある。
原因は「ホルムズ危機」か、それとも…
第1の見方は、いまの円安は「ホルムズ危機」によるもので、これが解決されない限り円安は収まらない、というものだ。
確かに、ホルムズ危機は重要な問題だ。そして、有事の際にはドルが買われやすい。中東情勢が不安定化すると、投資家は「安全資産」としてドルを選好し、円は売られやすくなる。
かつては円も安全通貨と見られることが多かったのだが、エネルギー輸入国である日本にとって中東危機は交易条件の悪化を意味する。このため今回の局面では、円は買われるどころか、むしろ売られる通貨になった。
円安が4月以降に進んでいることを見ても、円安がホルムズ危機によってもたらされたという見方には多くの人が賛同するだろう。
ただし、異なる見方もありうる。それは「円安はホルムズ危機だけでなく、将来の日本財政に対する危惧から生じている」との見方だ。
本稿の冒頭に述べたように、円安はホルムズ危機以前から進んでいた。これを考えれば、ホルムズ危機だけで現在の円安を説明することはできない。
「第2の見方」で問題とされるのは、財政に対する信認だ。政権が、財源の裏付けが乏しい減税や財政支出拡大を進めると、市場は財政の持続可能性に疑念を抱く。国債の発行が増え、将来のインフレや財政悪化が意識されれば、長期金利には上昇圧力がかかる。
このとき上昇するのは、景気拡大を反映した健全な金利ではない。財政リスクに対する上乗せ金利、すなわち「リスクプレミアム」や「タームプレミアム」と呼ばれるものが高まるのである。

