立石氏がCEOに就任した初年度の2018-19シーズン、STVVはさっそく日本人選手を獲得した。彼らは、目覚ましい活躍を見せた。
「初めて獲得した日本人選手は、当時19歳の冨安健洋選手です。STVVで試合に出続けて高いパフォーマンスをあげ、日本代表にも選出されました。そして最終的に、リーグナンバーワンの若手と言われるまでに成長しました。浦和レッズに所属していた遠藤航選手はボランチとして加入し、ベルギーリーグで1対1の局面を多く経験、攻守ともに活躍してくれました。
さらに、鎌田大地選手はシーズン開幕後にドイツ1部のフランクフルトからのレンタル移籍で加入。フランクフルトでは出場機会に恵まれませんでしたが、STVVで出場機会を得て自信を取り戻し、日本代表デビューも果たしました」(立石氏)
もっとも、日本人選手を次々と起用するSTVVの手法には、現地から懐疑的な視線も注がれた。ベルギー紙『Het Belang van Limburg』によれば、当時STVVの会長を務めていたデヴィッド・メーケルス氏は2019年、「(昨夏は)日本人を獲りすぎた」と語り、今後はベルギー、とりわけ地元リンブルフ州出身の選手の獲得に軸足を移す考えを示している。日本人選手の補強がクラブの成績を押し上げた一方で、その編成のあり方自体が現地で議論の対象になっていたことがうかがえる。
外圧を感じる出来事も少なくなかったという。
「ベルギーリーグではレギュラーシーズンを終えたときの上位6チームが『プレーオフ1』に進出できます。プレーオフ1は、欧州チャンピオンズリーグへの出場機会が得られるチャンスのある大事なリーグ戦です。しかし、我々が好成績をあげて5位をキープしていたタイミングで、リーグ理事会から『STVVのスタジアムの人工芝が、成績に好影響を与えている可能性がある』という見解が示されたのです。
そこで、プレーオフ1に進出してもホームで試合ができないかもしれないという懸念が生まれました。その結果、チームの雰囲気が沈み、成績が失速してしまいました。この出来事で、我々はリーグにとって受け入れがたい異物なのだと感じました」(立石氏)
1部リーグの座を守り抜いたSTVV
その後さまざまな紆余曲折を経ながら、STVVは1部リーグの座を守り抜いた。そして、コロナ禍を経て2022-23シーズンには、STVVは約174万9100ユーロ(約2億8000万円)の黒字を計上した。ベルギーリーグの1、2部の全25クラブのうち19クラブが赤字を計上する中でのことだ。
立石氏は「クラブ運営では、スポーツ面と財務面の両輪を切り離すことができない」と語る。STVVはどのように経営基盤を整えたのだろうか。そこには、日本資本である強みを存分に生かした戦略があった。後編へ続く。

