今回お邪魔した池袋教室は、長テーブルとパイプ椅子が置かれた「雑司が谷地域文化創造館」の一室だ。まるで学校の教室のようだなと懐かしさを覚えつつ、生徒のみなさんと挨拶を交わす。
正直に明かすと、このとき筆者は今までになく緊張していた。流派のある伝統芸能はハードルが高く、回りくどい言い回しで「お呼びじゃないのよ」とやんわり追い返され、すごすごしっぽを巻いて帰る……そんな最悪の展開すら覚悟していたのだ。
だが、その不安はすぐに打ち砕かれた。
「礼節を守る」こと以外のローカルルールは存在しない
レッスンを担当してくれた宗嗣(そうし)兼理事長・島田旦桜さんが、とても柔和な雰囲気の女性だったからだ。
旦早流吟詠会のこだわりは「礼節を守る」こと。裏を返せば、それ以外のローカルルールは存在しない。にこやかな空気のなか、詩吟のレッスンがはじまった。
さて、「詩吟」と聞いてどんなイメージがあるだろうか。筆者と同じ30歳前後の人の多くは、お笑いコンビ・天津の木村卓寛さんを思い浮かべるはずだ。「エンタの神様」でよく見た「吟じます」とひと言置いてから下ネタをいうあの芸風により、世間一般の詩吟のイメージが引っ張られている。
詩吟に関して完全な初心者である筆者も、お笑いが好きということもあり詩吟と聞くと真っ先に「エロ詩吟」が思い浮かんだ。しかし、詩吟の実態とあのお笑いはまったく異なるものだった。
そもそも、詩吟はどんなものなのだろうか? 詳しい歴史に関しては後編でお伝えするとして、ここでは簡単に説明する。気になる人はぜひ後編もチェックしてみてもらいたい。
詩吟とは、漢詩や和歌などの詩に、「節」をつけて自身の声で表現する日本の伝統芸能だ。詩に込められた作者の想いを汲み取り、時には力強く、時には伸びやかに声に出して表現する。

