ニチバン社内では、「たばねらが会社を救った」ということが代々語り継がれている。
もちろん、他企業も追随した。だがシェア7割という圧倒的数字が誇るように、ニチバンの先進性に迫ることはできなかった。
改正食品衛生法施行でたばねらの存続に黄色信号
ところが、である。近年、再び「たばねら」に危機が訪れていた。それは2020年、改正食品衛生法の施行である。粘着剤の材料の安全基準がさらに厳しくなったのだ。5年間の猶予期間が設けられたものの、努力を重ねた末に、対応できずに事業撤退した企業もあったというほどの困難な状況だった。
ニチバン事業戦略本部の平山繁明シニアマネジャーは言う。
「たばねらの存続にとって、最もターニングポイントとなった期間でした。当社でも数年間、試作に試作を重ね、無事に乗り越えて、より安心して使っていただける商品になったと思っています」
セロテープで日本を席巻した会社ならではの、技術の積み重ねと歴史の重みの勝利である。こと“貼る”ことに関しては一日の長がある。絆創膏の「ケアリーヴ」シリーズやセロテープはもちろん、病院で採血や注射をした後に貼る絆創膏や、数年前にインバウンド需要でドラッグストアなどで爆売れした貼り薬「ロイヒつぼ膏」も、ニチバンの製品だ。
名も知られず、ひっそりと、だがしっかりと我々の生活に馴染み、農家の負担も大幅に減らしたたばねら。次にスーパーでネギを手に取った時、その小さなテープが一企業を救った歴史を思い出すかもしれない。

