「でも、僕自身はその時のことをあまり覚えてないんです(笑)。もしそう言ったのだとしたら、単純に違う環境に行くのが不安だっただけではないでしょうか。だから、もし普通に公立の小学校に行かせていたら、きっとそのまま通ったと思います」
しかし、オルタナティブスクールのほうが幼稚園の環境と似ていたかというと、そうでもないようだ。見学の際、両親はできる限りフラットな態度を貫いていたと推測するが、もしかしたら「公立の学校ではなく、オルタナティブスクールに通ってほしい」という内なる思いが態度の端々から僅かに現れていたのかもしれない。「そういう影響は多少なりともあったと思う。子どもながらに何かしら感じていたのかもしれません」。
9歳で単身渡英することを決めた
秀樹さんは公立の小学校には通わず、近隣のオルタナティブスクールに通った。その学校では、年齢の異なる十数名の子どもたちが、自分でその日にやりたいことを考えて活動内容を決める。いわゆる「時間割」はなく、何かを強制されたり、制限されたりすることはない。
秀樹さんも8歳まで同校に楽しく通っていたが、ある時父から「こんな学校があるみたいだから、一度見学しに行かないか?」と提案された。
それが「世界一自由な学校」と称されるイギリスの「サマーヒル・スクール」だ。
サマーヒル・スクールは古い歴史を持つ世界的に有名なオルタナティブスクールの1つ。今から約15年前の当時、同校は海外からの寄宿生の年齢は9歳からと定めていた。「母国の言語・文化の記憶を損なわないレベルの年齢の下限は9歳である」というのが制限の理由だ。「これからの時代は日本だけではなく、世界を舞台にして生きていく力をつけさせたい」と考えた父は、秀樹さんが9歳を迎える前にこの選択肢を与えたいと考えた。
8歳の秀樹さんは父に連れられてイギリスへ飛んだ。現地を訪れたときの記憶が今も残っている。
「見学のときは確か、当時16歳くらい(同校の対象年齢は17歳程度まで)の、日本人の女子生徒の方に案内してもらいました。その方がとても優しく親切だったことが印象に残っています。あとは圧倒的に広い敷地と、その中に広がっていた豊かな森や草原の風景が子ども心に魅力的に感じたことを覚えています」
帰国後、父に今後の進路は好きなほうを選択するようにと促され、秀樹さんはイギリスに行くことを決めたという。とはいえ当時はまだ8歳。親と離れて暮らすことや、ほとんど英語が話せないことなど、不安は感じなかったのだろうか。

