“暴動”を起こせ―アジア歴訪でマークが出した唯一の要望
3週間にわたる今回のアジア歴訪は、マークにとって真の試練になりそうだ。海外で複数の首脳を訪問する初めての機会だから、きっとマークから質問やリクエストが山のように来るだろうと思っていた。ところが、実際に来た唯一のリクエストは、“暴動”だった。
正確を期すなら、マークの要望は「暴動または非暴力の集会」だった。
初めは冗談だと思った。非暴力の集会は私の専門分野ではないし、はっきり言って、暴動を組織してくれと頼まれた経験は一度もない。依頼者がテック企業のCEOとなればなおさらだ。マークの意図がうまく伝わっていないだけ、言葉の行き違いだろうと思った。“暴動”と“非暴力の集会”は、まったく異なるものだ。
しかしその後にデビーから届いたメールに、マークに会ったときこう言われたと書いてあった。〈集会でも暴動でもいいから、自分が人々に取り囲まれるか、“軽く群がられる”ような状況を作ってほしい。〉“軽く群がられる”が具体的に何を指しているのかよくわからず、私はこのリクエストそのものをいったん突き返した。
デビーと私は、マークの考えを変えられそうな唯一の切り札を出した――アジアの国で暴動を起こしたりしたら、中国政府にどう受け止められるか。まるで効果なしだった。マークは頑として譲らず、どうやら冗談で言っているのではないとはっきりした。
むしろマークは群衆の規模にやけにこだわった。それが何より大事なことらしい。百万人以上が集まる公開集会。マークが何より望んでいるのはそれだ。マークは理由を明かさなかったし、こちらから訊ける雰囲気でもなかった。たぶん、Facebookがオンライン上で持つ力をリアルな動員力に変えられるかを試そうとしていたのではないか。Facebookにはこれだけたくさんのユーザーがいる。その人々を動員できないだろうか。現実の行動に駆り出すこともできるのではないか。
動機はともかく、私に“暴動を引き起こす”という任務が与えられた。

