生まれ変わったらどんな動物になりたいか、という遊戯的質問がある。悠然と空を舞うトビのような猛禽類がいいと言う人がいるだろう。大海原をのびのびと泳ぐイルカを思い浮かべる向きもあるかもしれない。
野生動物の研究者たる私が真剣に思惟するならば、有力な候補として挙げられるのはコアラだ。地上でディンゴ(オーストラリアの野生のイヌ)に襲われる危険があるとはいえ、樹上にいれば安全である。草食なので食べ物に困ることはなく、ひねもすユーカリの葉を食べ、そうでなければ寝ていればいい。社会性がなく単独で暮らすので、迷惑千万な他者に煩わされることもない。ほら、まことに結構な人生ではないか。
暑さで命を落としてしまうコアラ
とはいえコアラにも脅威がある。一つは都市化にともなう生息環境の悪化であり、いま一つは夏の酷暑だ。内陸部を広大な砂漠が占めるオーストラリア大陸は、その大部分が暑くて乾燥している。コアラは本来、そうした気候に適応した動物であるが、近年は熱波と呼ばれる猛烈な暑さがしばらく続く気象現象が頻出する。そして熱波が起こると、コアラの死亡率が上がることが知られる。
暑さでのびるならまだしも、命まで落とすのはなぜか。実は樹上生活を送るコアラには、水をがぶがぶと飲む機会がない。雨が降ったり、夜に気温が下がって朝露が降りたりすれば樹上で水分を補給できるが、高温、乾燥の日々が続くとそれができない。

