さらに面白いことに、コアラは暑い昼日中、葉が食用にならぬユーカリ以外の木にいることがあった。ピンときた研究チームが表面温度を計測してみると、果たせるかな、その木はユーカリよりも若干冷たかった。
結果は明白だ。コアラは暑い日には、腕や脚をまっすぐに伸ばして体の表面積を増やし、ひんやりとした木の幹に体を密着させて、体の熱を逃がしている。なかんずく酷暑の日には、食事よりもオーバーヒート回避を優先し、少しでも冷たい木に移動する。
ところで木の表面温度が気温よりも低いのは不思議だ。直感的にはそれは気温と等しいか、あるいは直射日光を受けた分だけ高くなっていそうだ。
実際のところ、木は重量があるので熱の慣性力(温度変化のしにくさの度合い)が大きい。夜間に冷やされた木は、朝日が昇って気温が上昇してもしばらくは冷たいままである。重くて太い幹が、軽くて細い高所の枝や幹より冷たかったのもそのためだ。
それに木の表面は水分が付けば、気化熱で冷える。内部で地中から吸い上げられる水にも冷却効果がある。木の表面温度は案外複雑で、高さや種によって異なっても不思議はないのだ。
体の熱を逃がすことは、体内の水分節約にもなる
繰り返しになるが、恒温動物にとってオーバーヒート回避と水分節約は、コインの裏表である。コアラが木に抱き付いて体の熱を逃がすことは、そのまま体内の水分節約にも貢献する。もしもひんやりした木の幹がなければ、発汗やパンティングで体内の水分を使って体温を下げるしかないから、やがて喉がからからに渇き、命の危険にさらされるだろう。
このようにコアラが木に抱き付いて休むのは、断じて怠慢ではなく、立派な環境適応だったのである。おみそれしました。もっとも当のコアラにしてみれば、暑さの盛りには冷たい木に体を密着させてうとうとするのが何より気持ちいいから、そうしているだけなのだが。


