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【磐越道バス事故】自己防衛に走る学校と業者の醜態 免許返納を望む運転手に命を託した無責任体質の「あきれた実態」

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私立北越高校の生徒らを乗せたバスの衝突事故を受け、記者会見で謝罪する同校の校長(写真:時事)
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さらに、何度も事故を起こしている高齢者ともなれば、判断力や瞬発力などの認知機能に問題があった可能性も否定できない。「免許を返納したい」と漏らしていたのが事実であれば、本人もそれを自覚していた可能性が大きい。

それにもかかわらず、生徒を乗せて長距離を運転するという意識が十分でなかったなら、それは単なる技術の問題ではなく、職業倫理の問題である。同時に、そのような人物に運転を委託したバス会社の責任もきわめて大きい。

「誰も悪くない事故」にしてはならない

この事故で最も避けなければならないのは、「運転手が悪かった」「業者が悪かった」「学校は知らなかった」という形で、責任が細切れにされることである。重大な問題が生じたとき、原因を一人に集中させる方が心理的には楽になる。スケープゴートを作れば、組織全体の問題を直視しなくて済むからだ。

しかし、今回問われているのは、学校、業者、運転手のそれぞれが、生徒の命を預かる重みを本当に理解していたのかという点である。学校は正規の安全確認をしたのか。業者は適切な運行管理をしたのか。教員は引率責任を果たしたのか。運転手は乗客の命を預かる職責を自覚していたのか。これらは別々の問題であると同時に、連鎖した問題でもある。

学校事故や交通事故の後には、しばしば「再発防止に努めます」という言葉が使われる。しかし、それだけでは不十分だ。再発防止とは、抽象的な反省ではなく、具体的な制度変更を伴わなければならない。

この事故を受けて、遅まきながら文部科学省は、部活動の遠征における安全対策の検討を始めたという。今までそれがなかったということに驚かされるが、各教育委員会や学校にいわば丸投げされていたような状況であったということだ。

実際、教育委員会や学校によっては、部活動遠征の際に、認可を受けた正規の貸し切りバス利用の確認、契約書と請求書の照合、運転手の資格・所属確認、保険確認、引率教員の同乗義務、緊急時の連絡体制、保護者への説明責任を明文化して定めているところがいくつもある。

今回は、学校がそのどれも行っておらず、「知らなかった」という説明に終始しているという状況である。そのあきれるほどの杜撰さが、今回の悲劇を生んだだけでなく、その後の学校とバス会社の責任の押し付け合いともいえる発言の食い違いが生まれている。

生徒の死亡という結果の重大性を考えれば、学校と会社の説明の食い違いは、単なる事務的混乱では済まされない。それは、安全管理がどれほど杜撰だったかを明確に示している。亡くなった命は帰ってこないが、責任逃れではなく、記録、契約、意思決定過程をすべて明らかにすることが、亡くなった生徒と保護者に対する最低限の責任である。

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