現代では露骨に描きにくくなった欲望を、昭和というフィルターを通すことでエンターテインメントとして成立させているのです。
その意味で、細木数子という題材もまた、Netflixにとって極めて“外しにくい”選択だったはず。伝説のAV監督・村西とおるの波乱万丈な半生を描き、国内外で話題になった『全裸監督』と時代背景が重なることからも、それを裏付けることができます。
ちなみにドラマでは描かれていませんが、1980年代に「週刊ポスト」誌上で細木と、村西が生んだ伝説のAV女王・黒木香が対談していた事実もあります。
ただ、冷静に見れば、『全裸監督』の成功例があるだけに、昭和の実在人物をモデルにした細木数子という題材の選択自体は“安全牌”にも見えます。強烈なキャラクターは視聴を獲得しやすく、企画としてのリスクは高くありません。
視聴者も「こういう人物だ」と理解したうえで見始めることができます。挑発的な題材を扱っているようでいて、非常に計算された“外しにくい企画”でもあるのです。
「人生いろいろ」を流す皮肉な演出
ただし、このドラマが見られている理由は、単純なものではありません。細木の母親(富田靖子)が「数子、悪いことした人は地獄に堕ちるんだよ」と口にしても、その言葉が彼女には響いていないように見えるところに面白さがあります。
しかも、細木が金の亡者へと力を増していく過程を、安易に回収しません。「本当は傷ついていた」「だからこうなった」という説明を用意して、視聴者に共感の逃げ道を与えるような描き方ではないのです。彼女は、金と支配のために常に力を行使しているようにすら見えます。
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【終盤の勢いには不満が残るが…】
