バブル期と大きく違うのは、円高ではなく円安が進んでいる点です。円高というデフレ要因がないため、資産効果というインフレ要因を相殺するものがない。ゆえに資産効果で今後も物価上昇が続いていくと考えられるわけです。
日銀の無策が続けばインフレ率は10%超へ
バブル期の1989年12月まで日銀総裁を務めた澄田智氏は、後に「資産価格の上昇を見過ごして、金融引き締めが遅れたのは私の責任だ」といった趣旨のことを述べています。消費者物価指数が安定しているときに、株や不動産などの資産価格が上昇するのは初めての現象でした。世界的に見ても、そういうことはなかった。だから金利を引き上げる金融引き締めが遅れてしまった。そう反省の弁を述べられました。
資産価格が上昇している今、日銀はこの澄田氏の反省を活かさなければならないはずなのですが、早め早めの金融引き締めは行われていません。それどころか、実質金利をマイナスのまま放置しています。これでは、物価上昇を加速させているようなものです。
インフレをコントロールすべき日銀が何も手を打たない以上、ますます物価は上昇していきます。今回の物価上昇は私たちにとって非常に厳しいものになる。場合によっては、インフレ率が10%を超える可能性すらある。私はそう見ています。
講演などで、「インフレ率が10%超になるかもしれない」と私が言うと、「いやいや、そんなに高くなることはないでしょう」と楽観的な意見を述べる人が少なからずいます。90年代から30年以上にわたってデフレが続いてきたことを考えれば、インフレ率10%超は考えられない数値だと感じる人が多いのは無理からぬことかもしれません。
ただ、たとえばアメリカのインフレ率は、過去に最高14.8%まで上昇したことがあります。1980年3月のことです。アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)のポール・ボルカー議長(当時)は、このとき金利でインフレを抑えることをあきらめ、ばらまいたお金を回収するマネタリーベース引き下げに政策を転換しました。これは強烈な方針転換で、FRBの政策金利であるフェデラル・ファンド金利は20%まで上昇し、10年国債の利回りも15.8%まで上昇しました。
「こんなことをしたら景気が悪くなる」とボルカー議長は叩かれまくりましたが、強い人だったのでしょう。それでも政策を変えることはなく、最後にはインフレ抑制に成功します。
このようにインフレというのは進み始めると抑制するのが難しく、だから早め早めの金融引き締めが重要になるのですが、それができない日銀では、日本のインフレ率が10%を超える日が来ることも、あながち「ない」とは言えない状況なのです。

