しかし、それで景気が良くなるかと言えば、逆に悪くなるのは火を見るよりも明らかでしょう。要するに、アベノミクスは原因と結果が逆だったために、景気を回復させることができなかったのです。
株価・不動産価格の急騰がインフレを加速
日本の物価上昇が今後も継続していく可能性が高い2つめの理由が、「株や不動産など、資産価格が急騰している」 ことです。物価上昇率は消費者物価指数を基準に計算します。
資産価格が上がることを「資産インフレ」とは言いますが、物価上昇の直接的な要因にはなりません。正確に言うと、消費者物価指数の計算に「持家の帰属家賃」として含まれているので、物価上昇の要因の一つにはなりますが、さほど大きな影響を与えることもほぼありません。株価の上昇は消費者物価指数の計算には含まれません。
資産価格は、消費者物価指数の計算に「含まれていない」にもかかわらず、間接的に物価上昇に大きな影響を与えることが知られています。
わかりやすいのが1985~90年のバブル経済のときです。インフレ率が、85年は約2.0%、86年約0.6%、87年0.1%、88年0.7%、89年2.3%、90年3.1%と今よりもずっと低かったことがわかります。
ではなぜ、インフレ率が低かったのに、バブルが膨らみ、経済が狂乱したのか。その理由が「資産効果」です。当時、株価も不動産価格も上昇の一途でしたので、株や不動産をもっている人たちは、その評価額を見て大金持ちになったつもりになりました。もちろん、株や不動産を高値で売った人の中には実際に大金持ちになった人もいました。大金持ち気分で消費を増やす人たちが大勢いたのです。
たとえば、「シーマ現象」という言葉がありました。日産自動車の当時の最高級車シーマがバカ売れし、それがニュースになることで日産の株が買われ株価が上昇。日産株をもっている人は資産が増えたので、大金持ち気分でお金を使いました。こうした好循環が、好景気を生み、狂乱経済へとつながっていきました。
先ほど述べたように、景気が良くなればインフレになるはずなのですが、バブル期にインフレ率が低かったのは、なぜでしょうか。
答えは、為替にあります。85年に1ドル約238円だったのが、90年には1ドル約145円になりました。5年間で100円近くも円高が進んだのです。
円高は大きなデフレ要因ですから、資産効果というインフレ要因を円高というデフレ要因が相殺して、消費者物価指数の上昇率、つまりインフレ率が低く抑えられたというわけです。
バブルのときほどではありませんが、現在も株や不動産価格が高騰し、資産効果が生じて間接的に物価を押し上げていることは間違いありません。
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【インフレ率10%超が「ない」とは言えない】
