「割と充実していて、普通に働いてる仕事も。これがなんかまた仕事がすごくしんどくてとかだったら、またちょっとは変わってたかもしれないんですけど。今のところやり甲斐持って働けてるっていうのがある」(4月9日配信の『納言幸のやさぐれ酒場』イワサキの発言より)
未練タラタラなキノシタは、この配信回で「(今の)新しい相方には本当に申し訳ないんですけど、そっち断ってこっちで組めるならやりたい」と口にするが、イワサキは笑顔でそれをかわす。
「人前に出るのがちょっとNG」とも語っているため、今後も心境が変わることはなさそうだ。
あっさりとした幕引き
ピ夜のふたりを見ていると、どういうわけか筆者の脳内にくるりのセンチメンタルな楽曲『ばらの花』が流れ出す。
歯切れの良いギターが刻まれ、ジャズっぽい構成音のメロディーがループする。それを追うように、ハモりの旋律とともにドラムとベースが重なる。最初はコードがわからない。ベースラインによって、ようやく全体の輪郭が浮かび上がる。
歌詞の解釈は様々だが、思春期特有の不器用さや甘酸っぱさ、儚さや鈍い痛みが伝わってくる。とくにため息を吐き出すように歌われる「僕らお互い弱虫すぎて 踏み込めないまま朝を迎える」というパートが印象的だ。
ことさら声を張り上げることもなく、明るくも切なげな世界がどこまでも広がっていく。
「『じゃまたね』って感じです」(キノシタ)
「『バイバイ』じゃなくて『またね!』って感じ」(イワサキ)
前述の『納言幸のやさぐれ酒場』(4月2日配信回)の中で、ピ夜のふたりはそんなふうに自分たちの“収束”を茶化した。メディア出演もこの番組が最後らしい。何ともあっさりとした幕引きだ。
逆に言えば、この瞬間からピ夜は完全体になった。20歳前後の彼らはもう2度と戻って来ず、その刹那的な魅力は瞬間冷凍され、観客や仲間たちの記憶とアーカイブ映像だけがコンビの存在そのものになるからだ。
ただ、もうひとつの物語も想像してしまう。数年後、イワサキの気持ちが変わり、「……タッチ」とキノシタの手のひらを弾いている未来を。
