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元寇での日本の勝因は本当に「神風」だったのか/互角に戦った日本側、神風のストーリー性が「伝説」を歴史に残した

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鎌倉時代に侵攻してきた元寇で日本の勝利は本当に神風によるものだったのか(写真:freehand/PIXTA)
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当然だが、両者は並立する。日本勢が相応に戦ったことと、モンゴルが暴風雨による被害を受けたことは本来は矛盾しない。それにもかかわらず、神風だけが勝因として認識されたのである。

さらに、物語としての訴求力がある。元寇と亡国の危機、神風による解決は読者の心をつかむ文芸作品となった。それゆえに神風伝説は人口に膾炙したのである。

しかも民族神話として消費された経緯もある。幕末から明治・大正・昭和において神風は誇るべき歴史として扱われていた。スイスにおける「ウィリアム・テル」や「リュトリの誓い」と同様に、伝承が正しい歴史として扱われたのである。

なによりもドラマとして優れている。北条時宗(1251~84年)の武断処置、対馬と壱岐の徹底抵抗と玉砕、さらには集団戦術や「てつはう」に押される中での御家人・竹崎季長(すえなが、1246~1324年)や少弐景資(しょうにかげすけ、1246~85年)の勇戦、これに神風が加わって劇的な解決に至るからだ。

これは「元寇」を題材とする映画や小説が多数作られたことからも明らかである。戦後なら映画『日蓮と蒙古大襲来』(1958年公開)や海音寺潮五郎による小説『蒙古来たる』(文春文庫、2000年)だ。

宇宙戦艦ヤマトの愛の戦士たち

そのうち最大のヒットは、構成を転用した1978年に公開されたアニメ映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』である。数度の決戦に敗北しても絶望せず最期の戦いを挑む。その際にテレザートのテレサと名乗る女性が突然に顕現し、その大和魂を潔しとして嘉す。そして先導して「神風」の奇跡を起こす。元寇によせて筋書きを示せばそうなる。

さらには、敵中に決死攻撃をしかける展開も元寇由来かもしれない。内容の起源は1966年のTVドラマ『遊撃戦』である。44年当時の中国戦線を舞台とする筋書きだが、先述のヤマトにおける都市帝国内部への突入は『遊撃戦』の最終話での最終目標とされた桂林飛行場攻撃、B-29用の地下燃料庫への突入破壊の引き写しだ。

目標を自爆破壊する中西一等兵の役をヤマトでは真田技師長が、援護のために立ち往生を果たす三浦上等兵と上野兵長を斎藤隊長が、1人戻る黒田兵曹長を古代進が果たす形だ。

その挿入も竹崎季長のエピソードの追加にも見える。圧倒的な不利の中で、強大な敵軍や敵船に無勢で先駆けを仕掛ける。そのエピソードを作劇上追加する必要があったとも考えられるからだ。

いずれにせよ、ヤマトが好評を得たのも、神風伝説が持つ物語性の証左である。

なぜ、神風伝説が常識となったか。元寇について敗退寸前の日本勢と暴風雨による逆転勝利と理解するようになったかは、こういった理由があったためだ。

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