同じ減量という行為に対して、女優の減量は「健康を損なっている可能性(=不安)」として受け取られ、男優の減量は「能力の証明(=称賛)」として受け取られる。この反応の質のズレこそが、今回の「二重基準」の本質である。
なぜ受け取られ方が違うのか
なぜ、女性の体型変化は「健康シグナル」として読まれ、男性の体型変化は「能力シグナル」として読まれるのか。進化心理学はこの問いに対して、明確な答えを持っている。
ミシガン大学のバス教授は1989年、37カ国1万人を超える対象者への調査で、男性が女性の外見に求めるものを実証した(※1)。
その中核にあるのは「若さ」「健康」「体型」——つまり、女性の身体は「繁殖力・健康状態のシグナル」として無意識に評価されるという傾向が、文化や経済状況を問わずほぼ普遍的に存在するという発見だ(※1)。
この傾向の根底には、ハーバード大学のトリヴァース教授が72年に提唱した「親の投資理論」がある(※2)。
妊娠・出産・授乳という多大な「投資(ここでは生物学的コストの意味)」を行う女性は、配偶者として選ばれるために「健康で繁殖力がある」という外見シグナルを維持することが進化的に求められてきた。
その結果、人間の脳は女性の体型変化に対して特に敏感に反応するよう「設計」されている(※2)。
川口春奈の激やせを見た人が瞬時に感じる「大丈夫?」という不安は、この進化的なメカニズムが、瞬間的かつ無意識で作動した結果だと解釈できる。「役作りのため」という文脈情報よりも先に、脳は「女性の身体がやせすぎている=健康への危険信号」として処理してしまうのだ。
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【男性の体型変化が示すシグナルは?】
