加えて、韓国の防衛大手企業ハンファがオーストラリアの造船大手オースタルへの出資を拡大し、筆頭株主となったことも日本側の懸念材料となっている。
防衛技術の機微性を考えれば、企業の資本構造そのものが安全保障問題となりうる。技術流出リスク、知的財産の管理、サプライチェーンの信頼性は、共同開発の前提条件に直結する。
成否を分けるのは「ガバナンス」
以上の3つの課題は、それぞれ別の問題に見えて、最終的には一つの本質に収束する。それは、プロジェクト統治能力(ガバナンス)である。
重要なのは「ゼロ変更」というスローガンではなく、仕様の早期固定と設計変更の抑制、そして日豪間の統合管理をどこまで徹底できるかである。長期の大型装備案件を成功させるには、設計、契約、調達、建造、教育訓練、維持整備まで含む厳格な実務統治が不可欠だ。
この案件は、日本にとって防衛装備移転政策の試金石である。成功すれば、日本は本格的な防衛輸出国としての地位を確立し、今後の国際共同開発にも道を開く。単に艦を売ったというだけではなく、「複雑な大型装備案件を統治できる国」として見られるようになる。
一方で失敗すれば、その信頼性は大きく損なわれる。防衛産業基盤の将来、国際共同開発への参入余地、ひいては日本の安全保障政策そのものにも影響を及ぼしかねない。
オーストラリアにとっても、この計画は海軍再建の中核であり、その成否は長期的な戦力構築に直結する。老朽化したアンザック級更新の遅れは、そのまま海軍力の空白や負担増につながる。だからこそ、この案件は両国にとって「失敗できない計画」なのである。
適切に運営されれば、このプロジェクトはインド太平洋における防衛協力のモデルとなる可能性を持つ。日豪の準同盟的関係を、より実体的な安全保障協力へと引き上げる象徴的な案件にもなりうる。
しかし一歩誤れば、コスト膨張と納期遅延という「既視感のある失敗」に陥る。それはまさに、「ゼロ変更」が回避しようとしていたはずの結末である。
新型FFMの動画はこちらです(筆者撮影)
