さらに重要なのは、初期3隻だけでも約100億豪ドル(約1.1兆円)規模と報じられている点である。これは単なる建造費というより、設計、統合、インフラ整備、試験、初期支援を含む「能力構築コスト」の性格が強い。つまり、最初の3隻は単なる艦艇建造ではなく、プログラム全体の立ち上げ費用を背負わされている。
問題は、この初期投資の膨張が後続艦にどう波及するかだ。設計変更や統合作業が長引けば、後続艦の単価も当然押し上がる。そうなれば、11隻全体としての財政負担はさらに拡大する可能性が高い。
オーストラリア側にとっても、これは海軍再建と産業政策を一体化させた国家プロジェクトである以上、単なる「予算超過」では済まない。財政的な持続可能性、国内雇用、造船基盤維持、そして政権の説明責任まで含めて問われることになる。
第3の課題は、より構造的な問題である。制度、産業、運用の各面で、日豪双方ともに経験不足である点だ。
まず日本側だ。最新鋭の護衛艦の輸出・共同開発は戦後初の試みであり、政府と企業が一体となった輸出体制は未成熟だ。アメリカのFMSのような制度がないため、艦体やレーダーなどを個別契約で処理する必要があり、統合管理は複雑化する。
オーストラリアは国内で建造できるか
実際、NECは4月18日、最初の3隻に共通して搭載される9種類の防衛装備品の供給契約を豪州政府と締結したと発表した。艦艇の任務遂行能力と運用時の信頼性の向上に不可欠な水上艦用ソーナーなどの水中関連機器や複合通信空中線(UNICORN)などの通信・航法関連機器を提供する。
ここでは単に「売る」だけでなく、長期の維持、補給、訓練、アップグレード、機密保護まで含めた包括的支援が求められるが、日本はその面で実績が限られる。
一方のオーストラリアも課題を抱える。最初の3隻は日本で建造されるが、その後は国内建造へ移行する。しかし、高度なステルス艦建造やシステム統合の経験は限定的であり、日本からの技術移転が不可欠となる。この「日本建造から豪州建造への移行段階」は、遅延とコスト増の最大のリスクポイントとなる可能性が高い。
さらに、運用とのギャップも見逃せない。もがみ型は省人化設計を特徴とするが、一部作業は依然として手動に依存している。日本独自の戦闘システムやセンサーをオーストラリア海軍がどこまで運用できるのか、あるいはアメリカ系システムとの整合をどこまで図るのかという問題も残る。省人化設計が豪海軍の運用実態にどれだけ適合するのかという視点も、本来はより慎重に検証されるべきだろう。
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【試金石となるか試練となるか】
