オーストラリア海軍の仕様では、防空にESSMブロック2、対艦攻撃にノルウェー製NSM、魚雷にMk54を採用する見通しであり、日本仕様とは兵装体系が異なる。
一方、海上自衛隊もがみ型護衛艦の能力向上型である「新型FFM」は、23式艦対空誘導弾(A-SAM)、12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型)、12式魚雷といった国産システムを中核に据える構成である。
問題は、これが単なる装備の「置き換え」では済まない点にある。異なる兵器体系を統合するには、戦闘指揮システム(CMS)の再統合、センサーや発射装置とのインターフェース調整、電力・重量・艦内配置の再設計など、艦全体に及ぶ変更が必要になる。これは艦艇開発において最もリスクの高い領域の一つであり、過去の事例でもコスト膨張と納期遅延の主要因となってきた。
要するに、「ゼロ変更」はすでに事実上成立していない。より正確に言えば、政治的には「ゼロ変更」と説明してきながらも、実務上は相応の変更を前提に進んでいるのが実態に近い。
ハンター級が示す「悪い前例」
そのリスクを裏づけるのが、オーストラリア海軍のハンター級フリゲート計画である。同計画も当初は「既存設計ベースの低リスク案件」とされた。しかし現実には、要求の追加と設計変更の連鎖により、コスト増とスケジュール遅延に陥った。
初号艦の就役は2030年代半ばにずれ込む見通しであり、設計の「小修正」がやがて全体の複雑化を招く悪しき典型例となっている。
この前例を踏まえれば、三菱重工が目標として掲げる29年12月の1番艦納入は、確かに大きな節目ではあるものの、決して楽観視できるものではない。マールズ氏自身もそのスケジュールが容易ではないことを認めている。
第2の課題は、コストの膨張と不透明性である。
オーストラリア政府の最新見積もりでは、「Project Sea 3000」とも呼ばれるこのGPF計画の費用は150億〜200億豪ドル(約1.7兆~同2.28兆円)へと拡大しており、24年時点で示されていた70億〜100億豪ドル(約8000億~同1.1兆円)から倍増している。
しかも、現地のメディア報道によれば、当初の数字は今や最初の3隻に加え、未定義の「associated upfront costs(関連する初期費用)」を含むものとして扱われているとされる。つまり、何がどこまで含まれているのか政府による説明ではいまだ明確ではない。総事業費全体の実像は、この時点でもなお不透明だ。
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【制度・産業・運用面で露呈する経験不足】
