東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資

日豪間のフリゲート共同開発が示す3つの死角/日本の防衛輸出の試金石となりうるか、あるいは試練となるか

10分で読める
2025年5月、三菱重工業が「DSEI Japan 2025」で公開した新型FFMの100分の1模型。(写真:筆者撮影)
  • 高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
2/5 PAGES

まず、この案件の性格については誤解が多い。一般には日豪政府間の大型合意のように受け止められがちだが、実際にはアメリカとの対外有償軍事援助(FMS)のような政府間契約ではない。あくまで「オーストラリア政府と三菱重工」との商業契約であり、日本政府は全面的に支援しているものの、制度的にそれをこと細かに包括管理する立場にはない。

「契約」の実態は政府間ではない

FMSではアメリカ政府が契約主体となり、供与から維持・補給までを一体で担う。一方、日本には同様の包括的な国家主導制度がなく、装備移転は企業ごとの個別契約に依存しやすい。

4月18日にオーストラリア南部のメルボルンで行われた式典も、この構図を象徴している。小泉進次郎防衛相とリチャード・マールズ副首相兼国防相はいわゆる「もがみ覚書」に署名し、防衛産業協力の深化を確認した。だが、事情に詳しい豪州側の関係者によると、契約そのものは3月末に豪政府と三菱重工の間で締結されていた。

2026年4月にオーストラリアで行われた調印式に出席した小泉進次郎防衛相(右)とオーストラリアのリチャード・マールズ副首相兼国防相(写真:小泉進次郎防衛相のXへの投稿より)

つまり、4月の署名式典は正式契約の瞬間というより、政治的なメッセージ発信の意味合いが強かったとみるべきだろう。開催地がマールズ氏の選挙区であるメルボルンだったことも、その政治的性格を印象づける。

つまりこの案件は、三菱重工という民間主導の安全保障案件であると同時に、政治と産業政策が色濃く絡み合うプロジェクトでもあるということだ。

課題① 「ゼロ変更」はすでに成立していない

最大の論点は、オーストラリアがこれまで繰り返し強調してきた「ゼロ変更(zero change)」アプローチのなし崩し的な変化である。

本来この方針は、日本の既存設計をほぼそのまま導入することで、コスト削減と納期短縮を図るという合理的な構想だった。初期段階では、変更は船内表示を日本語から英語に切り替える程度にとどまるといった説明すらあった。つまり、「実績ある艦をそのまま持ってくる」ことでリスクを最小化するというロジックである。

しかし、現実はすでにその前提から大きく離れている。

次ページが続きます:
【「ゼロ変更」はすでになし?】

3/5 PAGES
4/5 PAGES
5/5 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象