一方で足まわりに関しては、欧州の荒れた路面ではもう少し落ち着きがほしいと感じる場面もあった。スピードトリプルの電制サスペンションやストリートトリプルのOHLINSと比べると、やや“物足りなさ”を覚えるのも事実だが、もちろんターゲットや価格帯が異なるので単純比較はできない。たぶん、リアサスペンション側のプリロードを少し締めて固くすることで、公道では十分カバーできるはずだ。
もうひとつ、プライスもかなり競争力があると思う。メーカー希望小売価格は税込124万9000円~で、同カテゴリーのアッパーミドルクラス(800cc~900cc)のネイキッドモデルと比べてもリーズナブルだ。最近は国産も外車も高値なので、デザインや性能や質感を考えても輸入ブランドとしては「格安感」があると思う。
今の感性に響く、大人のロードスター
総評としては、全体としての完成度は非常に高く、エンジン、車体、足まわり、そして重量配分まで含めたトータルバランスの良さが際立っていた。トライデント660より一段上の余裕とパフォーマンスを持ちながら、扱いやすさはそのままという絶妙なポジションだ。
デザイン的には昔気質のネイキッド好きには刺さりにくいかもしれないが、このバイクが向いているのはそこではない。若い感性を持ったライダーや、知的で感度の高い大人たち。アートやカルチャー、ファッションといった価値観にも自然に寄り添う存在だ。日常からツーリングまで気負わず付き合えて、走ればちゃんと気持ちいい。トライデント800は“頑張らなくても楽しい”を高いレベルで成立させた、大人のためのロードスターだ。
