ちなみに中国は決して止められないモンスターではなくて、むしろトランプ氏の方が止められないモンスターになり得ます。純粋な軍事能力で言えば米軍の方が圧倒的に高いですから、アメリカが暴れだす時の方が怖いですよ。
辻:これまではアメリカが「大長編ドラえもん」の映画版に出てくる頼もしいジャイアンだったけど、これからはテレビ版の理不尽なジャイアンになるかもしれない、と。
小泉:そう(笑)。もしかしたら、その時は中国の方が対抗馬として信用できるという世界が来ることも、僕は全然否定しません。
測定可能な尺度で議論することが必要だ
辻:国内では、日本は全く自衛する必要はないというような極端な考え方を持つ人もいますが、私はそこまでは思いません。それでもやはり、日本の歴史から鑑みても憲法9条は堅持すべきだと思いますし、際限ない抑止論より経済的な交渉カードを含めた平和外交の方が、よっぽど現実的な安全保障政策だと考えています。
そんな考え方を持った私が、今こうして安全保障の専門家とあれこれ考えを重ねて対話をすることができている。対話の糸口があるとすれば、こうして極端でない位置にいる者同士で、レッテル貼りをせず具体的な政策ベース、ロジックベースの議論をし、右派左派など自分と近い考え方の中でより強硬な意見を持つ人たちに、その議論を広げていく。そういう中庸な伝達しかないのかなと思いました。
小泉:そうですね。お互いの陣営で「脳内の敵」を作り上げて、「あいつらは馬鹿だ」とか「誰かに操られている」とレッテルを貼り合っていても何も進みません。僕らは馬鹿でもないし、外国の手先でもないつもりです。
お互いにその前提を確認できた上でなら、必ず建設的な政策論ができるはずなんです。感情論ではなく、測定可能な尺度で議論をしていく。それがこれからの日本の安全保障には絶対に必要だと思います。
だからこそ、この本を書かれた丹羽さんがもしここにいらっしゃったら、どんなお話ができたかなと考えますね。丹羽さんが危惧されていた「日本を良くない方向に向かわせている代表」みたいな人間が僕なわけですから(笑)。そういう相手と丹羽さんがどういうふうに対話されたか、すごく気になります。
(後編につづく)*後編は4月24日(金)に公開予定です。
(構成:中山真季/川村浩毅)

