アナログでは再現しにくい「どこでも学習環境」を、デジタルが実現したというわけだ。
「アウトプットにデジタルは向かない」という落とし穴
「デジタルをうまく使えるといっても、アウトプットにはほとんど使っていなかった」と尾原さんは強調する。
「4択アプリなど演習系のアプリも存在するけど、演習量が十分じゃないし、問題の質もよくない場合が多い。インプットとアウトプットはちゃんと分けるのが大事」
アウトプット中はスマホをバッグの中にしまい、最初の1時間だけ好きな動画を流して手を付け、徐々に切っていくという段階的な方法をとっていた。
スマホの誘惑を防ぐ工夫として、「iPadには勉強に使うアプリしか入れない。ゲーム系は一切入れない。iPadは私にとって勉強道具の1つ」と、デバイスごとに役割を明確に分けることを実践した。道具の「キャラ立て」が、集中力を保つスイッチになっていたのだ。
私も教える生徒からよく聞くのが、「授業動画を見ているのに親に怒られた」というケース。
「お母さんが授業動画って気づかずに注意してくるという事例がよくある。保護者の方も授業動画が何か、一度自分で見てみてほしい。理解してもらえないおうちの子は、やっぱりきついと思うので」(尾原さん)
スマホをいじっているように見えても、勉強している可能性がある。頭ごなしに叱る前に、画面の中身を確認する一手間が必要な時代になっている。世代間の「デジタル勉強ギャップ」を埋めるのは、親子の対話だ。
「スマホを使えなくして封印するのが最高の勉強法だった」という一世代前の常識は、もはや通用しない。地方の公立から塾なしでも慶應に合格できた尾原さんの経験は、スマホとの賢い付き合い方さえ身につければ、どこにいても学習の質を高められることを示している。
今の10代の中で、TikTokや動画を見て時間を溶かしている子と、同じスマホを使って着実に学力を上げている子の間には、見えない格差が生まれている。
問われているのは、スマホをやめさせる力ではなく、スマホを使いこなす力だ。



