そのキャリアのなかで気づいたのは、「とんでもなく仕事ができる人」に共通しているサイクルでした。
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良いたたき台を早く作れるから、良いフィードバックが得られる
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良いフィードバックが得られるから、仕事がどんどん進む
この好循環が、仕事ができる人とそうでない人を分けているのです。
重要なのは、「仕事の構造」は誰でも学べるということです。地頭や経験年数は関係ありません。私が提唱するたたき台の作り方は、一度覚えてしまえば方程式のようにいつでも応用できます。
「たたき台は早く出せばいい」は大きな誤解
「たたき台」と聞くと、「とにかく粗くてもいいから早く出す」という意識を持つ方が多いです。しかしこれは半分正解で、半分誤解です。
粗削りでいいのは事実ですが、「早く出しさえすれば良いたたき台になる」わけではありません。見当違いの方向で出した資料は、相手が何とコメントすれば良いか分からず、議論が前に進みません。それはたたき台ではなく、ただの「的外れな資料」です。
私が定義する良いたたき台には、4つの条件があります。
① ゴール(期待する成果)が明確になっている
② 検討の前提が整理されている
③ 打ち手の選択肢が複数検討されている
④ 推奨案が1つ選ばれている
この4条件を満たすたたき台を作れるようになることが、仕事力の底上げにも、AI活用の精度向上にも直結します。
AIに「(この4条件で整理した)資料のたたき台を作って」と具体的に依頼できるようになって初めて、本当の意味でAIを使いこなしていると言えるでしょう。
さらに、良いたたき台を作れる人には、仕事の速さだけでなく、組織内での信頼とキャリアにも大きな恩恵があります。
「あの人のたたき台はいつも的確で議論しやすい」——そう評価されるようになると、重要なプロジェクトを任されやすくなります。多様な関係者とやり取りする機会が増え、会社の状況や戦略を深く理解できるようになります。そして、複数の案から1つを選ぶたたき台作りの経験が積み重なることで、リーダーに不可欠な意思決定力の基礎も育まれていきます。
「とりあえず考えてみて」「たたき台を作って持ってきて」——この言葉をスキルアップのチャンスとして活かせるかどうか。それを決めるのは、たたき台の作り方を知っているかどうかです。

