「わかった。私に任せておいて」と頼もしく請け負ってくれた大家さん。麻美さんと文則さんにそれぞれ40項目の質問に5段階で回答するように指示した。「相手の信仰が気になるか」「別居婚を望むか」などの質問事項があった。
「文則さんも提出してくれたので、大家さんがホワイトボードに私と彼の回答が異なる点を付箋に書いて貼り出しました。大家さんは一つひとつ取り上げて議題にし、彼が私と結婚しない理由をすべて潰してくれたんです」
しかし、文則さんは理詰めで説得されたわけではない。最終的には、麻美さんが今までの婚活黒歴史を洗いざらい話して泣いたのが効いた。
「彼は神かと思うほど優しい人。仕事の関係で、犯罪被害者家族の支援ボランティアを長くしていたぐらいです。私の話を聞いて可哀そうだと思ったようで、『そんなに結婚したいならうちにお嫁に来るか?』と言ってくれました。捨て猫を拾う気持ちだったと思います」
実際の麻美さんは借りてきた猫のようにおとなしくはない。文則さんの実家に入ったものの義母と衝突。争いごとが嫌いな文則さんは実家を出ることに決め、今は4歳になる息子と3人でマンション暮らしをしている。
「自由を愛する人なので、私も自由にさせてくれています。私が苦手な家事があってもお金と機械で解決する方針です。食洗機って便利ですね」
イライラして当たり散らしたら「命の母」を
幼いながらもプライドが高い息子の子育てに悩み、イライラして当たり散らすこともある。それでも自分の母親のようにならずに済んでいるのは、文則さんが包み込んでくれているからだ。
「私が八つ当たりしても、ケンカになりません。通販で買ったらしい『命の母ホワイト』(生理前の不調を和らげる薬)に『よかったら』という付箋を貼って置いておいてくれるだけです(笑)」
いわゆる毒親の支配から精神的にも物理的にも逃れられた麻美さん。すでに40歳直前だったが、頼るべき人に頼ったことで今の生活がある。人が幸せに生きるために「遅すぎる」ことはないのかもしれない。
