夕食後、夫にどうしても気になっていたことを切り出そうとした。
「少し話せる?」と声をかけると、彼はスマホの画面から目を離さずに「いま? 疲れてるんだけど」と不機嫌そうに言った。勇気を振り絞って続けようとすると、「その話、前もしたよね? また?」とため息をつかれる。言葉が喉の奥で固まり、結局「ごめん、またにする」と引き下がってしまう。
話し合いたいだけなのに、いつもこうして終わる。問題は何ひとつ解決しないまま、胸の中だけが重くなっていく。気づけば、話題を選び、言い方を選び、相手の機嫌を読むことが当たり前になっていた。
「どうしてこんなに気をつかっているんだろう」とふと我に返った瞬間、胸の奥に小さな痛みが走った。
自信や判断力を奪う「モラハラ」の脅威
一見どこにでもある夫婦のやり取りに見えて実は違います。疲れているのだから仕方ないで済ませていないでしょうか。こうした関係性は、モラハラ(モラル・ハラスメント)といえます。
モラハラとは、言葉・態度・沈黙・無視などを使って相手の心を傷つけ、支配しようとする精神的な暴力のことを指します。相手を否定したり、責め続けたり、無視したり、機嫌でコントロールしたりすることで、「自分が悪いのでは」「自分さえ我慢すれば」と相手に思わせ、関係の主導権を握ろうとする行為です。
殴る・蹴るといった身体的な暴力とは違い、目に見えにくく、ゆっくりと相手の自信や判断力を奪っていきます。また、多くの場合、優しさや謝罪を交ぜながら繰り返されるため、被害者は混乱し、「これは普通のケンカなのか」「自分の気にしすぎなのか」と判断が難しくなります。





















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