「弱音を吐けない」起業家の宿命 7割がメンタルヘルス問題に直面!孤独と疲弊が蝕むエリートたちの精神の危機

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ベビー用品会社エコマムの創設者ジョディ・シャーマンは17歳で自死。ソーシャルネットワークのディアスポラの創設者イリヤ・ジトミルスキーは22歳で自死。カンブリアン・ゲノミクス社の創設者兼CEOオースティン・ハインツは33歳で自死している。

起業家の自殺は北米だけの現象ではない。

ドイツの富豪アドルフ・メルクルは列車に飛び込み 、ハンガリー有数の資産家だったペーテル・クレサンは自死。ニュージーランドのジェイク・ミラーも26歳で自死。中国の起業家、茅侃侃は35歳で練炭自殺した。

インドでは、起業家の自殺率が「1時間に1人が自殺する」と言われるほど高くなっているという。

これらの悲劇は、外部からのプレッシャーだけでなく、内面的な苦悩が極限に達した結果だと指摘されている。

称賛と危機の狭間

起業家は、先進国でも低所得国においても、経済成長と社会の発展の担い手である。彼らがいなければ、斬新なものも、生活水準の向上も、何もないところからまったく新しい産業を生み出す可能性も手に入れられないだろう。

社会は、新しいエネルギー源の創出、パンデミックや自然災害の予防、高齢化社会に伴う慢性疾患からの保護、そして独裁者が引き起こす戦争の抑止といった、きわめて厄介な問題の解決を起業家に頼っている。

しかし、その「野心的な精神」や「燃え立つ魂」には、大きな代償が伴う。

多くの起業家は、人と違った角度から考え、気分の変動が激しい。頭の回転が速く精神的に強いと以前から言われているが、その内側にひどく脆い面が潜んでいることがある。

彼らのマインドは、素晴らしい成功を生み出す才気がある一方で、事業の成功や挫折に伴う不安や、物事の不可測性、自己陶酔、利己主義、放縦、強欲、対抗意識、さらには欺瞞にも屈するおそれがある。

フリーマン博士は、「起業家コミュニティ自体が、スター起業家を大げさな言葉で賞賛する傾向」があり、その結果、「しっかりした目標があり充実した人生を送っているように見える人たちが、これほど脆いのはどうしたわけか」と、世間の人々は疑問に思うかもしれない、と述べている。

起業家が社会に不可欠な存在であるからこそ、彼らが健康を維持し、その有り余るほどのエネルギーを「狂気」ではなく、建設的な「エネルギー」として発揮できるような環境を再構築することが、今、急務となっているのだ。

ニール・シーマン 起業家、メンタルヘルス研究者

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Neil Seeman

トロント大学法学部卒業およびハーバード大学公衆衛生大学院修了後、ネット起業家・メンタルヘルスの研究者として活躍。現在、トロント大学Dalla Lana School of Public Healthで教鞭をとるほか、公衆衛生やメンタルヘルスに関わる多くの機関でシニアフェローを務める。『日経アジア』、『トロント・スター』などにも定期的に寄稿を行うほか、メンタルヘルスに関する研究を『ネイチャー』などの一流学術誌で発表。これまでにメンタルヘルス関連の書籍三冊を共同執筆した。2011年に出版された著書『XXL: Obesity and the Limits of Shame』では肥満に関する公衆衛生政策について考察し、ドナー賞(カナダで公共政策分野の優れた本に授与される賞)の最終選考に残るなど、高い評価を受けた。

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