「弱音を吐けない」起業家の宿命 7割がメンタルヘルス問題に直面!孤独と疲弊が蝕むエリートたちの精神の危機

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カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部のマイケル・フリーマン博士が2015年にまとめた研究は、この問題の深刻さを明確に示している。

調査によると、起業家の72%がメンタルヘルス上の懸念を訴え、49%が「長年1つまたは複数のメンタルヘルスの疾患」の既往歴があると回答した。

これは、起業家ではない人々の比較群で同様の既往歴があると回答した32%を大幅に上回る数値だ。

特に注目すべきは、起業家の30%がうつ病の既往歴があると回答しており(比較群の2倍)、20%がADHD(注意欠如・多動症)であり(比較群の6倍)、1%が双極性障害と診断されたことがあり(比較群の10倍)、12%が薬物の乱用歴があると回答している点だ(比較群の3倍)。

さらに、起業家は自殺未遂や精神科へ入院した経験が比較群の2倍となっており、メンタルヘルスの疾患に苦しむ家族がいる環境で育った者がはるかに多い傾向が見られた。

フリーマン博士は、「起業家としての活動と、自己申告による個人および家族のメンタルヘルス疾患との間に根本的関係」がある、と結論付けている。

栄光と挫折のサイクルが生み出す疲弊

起業家の人生は、絶え間ない浮き沈みと激しい競争に満ちている。

事業の成功は、大きな達成感とドーパミンによる高揚感をもたらすが、その裏には避けられない挫折、厳しい競争、眠れない日々、そして経験した者でなければ分からないほどの疲労が待ち受けている。

多くの起業家は、家族や友人と一緒に過ごす時間が少なく、孤立感を抱きやすい。また、ギャンブル、アルコール、薬物、享楽的な生活といった誘惑に晒されることも少なくない。

トニー・シェイは、オンライン靴小売業のザッポスを年間売上10億ドル超へと押し上げ、『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説』というベストセラーも著した成功者だった。

しかし、その輝かしいキャリアの裏で、彼は失顔症、自閉スペクトラム症、うつ病、そしてアルコールや亜酸化窒素の乱用に苦しんでいたことが後に明らかになった。

彼は2020年に煙を吸い込んだことが原因で亡くなったが、友人たちは彼の死の直前に「ドラッグのやりすぎだろう」と指摘していたという。

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