「俺たちに投票しなければ支援はない。あなたは困った人を見殺しにする」と言ってるようだ…石破政権「全国民に2万円給付」に批判殺到の必然
いま挙げた疑問点は、いずれもそれなりに理屈に基づいている。それ以外にも、今回の公約は、心情の面でも違和感を残している。繰り返すようだが、石破氏は「困った人を助ける」ことを主目的とすることで、バラマキとの批判を回避しようとしている。
法案提出の理由にするのなら、まだ理解できる。しかし、それを「選挙に挑むための公約」としてしまえば、有権者に対する「俺たちに投票しなければ支援はない。もし自民党が下野すれば、あなたは困った人を見殺しにすることになる」といった“脅し”のメッセージを与えかねない。
野田氏は「選挙前にニンジンをぶら下げている」と表現していたが、見方によっては「身代金を要求している」ようにも感じさせてしまう。
そもそも、もし本当に非課税世帯の救済を、バラマキの理由とするのであれば、国民一律の部分を削減、またはゼロにして、その分を低所得者層に上乗せするほうが、筋は通っている。「困っている方々」を引き合いに出すことで、ダシに使っているように見えてしまうのが問題なのだ。
「本当に困ってる人」は非課税世帯なのか?
もっとも、非課税世帯への現金給付が「本当に困っている人」への解決策になるかは、また別の議論が必要となる。年金収入を中心とした高齢者世代は、非課税世帯になりやすい。そのため、非課税世帯への給付は「現役世代から高齢者への“上納金”」でしかないとの指摘は絶えない。
少子高齢化によって、高齢者の政治的影響力が高まることは、“シルバー民主主義”と呼ばれて批判されることが多々ある。そして、その背景には、高齢者向けの政策を重点的にアピールすることで、票を集めようとする政治家たちが存在する。
結果的に、若年層は「自分たちの1票では何も変わらない」と失望し、それをメディアは“政治離れ”とあおる。若者は離れたくて離れているのではない……と言いたくなるが、永田町には響かない。
現金給付に話を戻すと、非課税世帯を対象とした政策で、どれだけ「食うに困る現役世代」を助けられるのか。その点において納得のいく説明がない限り、ただ単に世代間対立をあおるだけになり、「高齢者票をねらったバラマキだ」と取られても仕方ない。
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