米中GPU競争に遅れる日本、半導体サプライチェーン川上支配とオープンウェイトモデルが逆転のカギ
LLM開発やスーパーコンピュータの規模で日本が世界のトップを走っているわけではないかもしれないが、AI革命を支える半導体サプライチェーンの川上分野では、日本企業が圧倒的な競争力を有している。この事実は、しばしば見過ごされがちだが、日本の戦略的資産と言える。
まず、半導体チップの基板となるシリコンウエハーでは、信越化学工業(世界シェア31%)とSUMCO(同23%)の2社で世界市場の半数以上を握る。ウエハーの原材料である多結晶シリコンでもトクヤマが世界シェア30%を占める。
フォトレジスト(感光材)においては独占状態
回路パターンをウエハーに転写するフォトリソグラフィ工程に不可欠なフォトレジスト(感光材)においては、JSR、東京応化工業、信越化学工業、住友化学、富士フイルムといった日本企業群が世界市場の実に90%以上を寡占している。これはほぼ独占状態と言ってよい。
さらに、回路の原版であるフォトマスクの材料となるマスクブランクスでは、HOYAが世界シェア70%と圧倒的であり、最先端のEUV(極端紫外線)向けマスクブランクスではAGCが強みを持つ。
半導体製造装置においても、東京エレクトロンは世界トップ3~4位に位置し、世界の装置メーカー売上高トップ10には日本企業が4社入っている。
これらの素材や装置は、AIを駆動する高性能GPUを含むあらゆる半導体の製造に不可欠である。つまり、AIハードウェアを大規模に生産しようとする国や企業は、直接的・間接的に日本の技術力と製造基盤に依存せざるを得ない構造になっている。
これは、AI分野における日本の「静かなる影響力」であり、国際的な技術外交やパートナーシップにおいて強力な交渉材料となり得る。この川上での強みは、AI時代の日本の経済安全保障と産業競争力にとって極めて重要である。
また、特殊部品では、ソニーがスマートフォンカメラなどに使われるCMOSイメージセンサーで2020年に46%、2023年にも45%と世界首位のシェアを維持しており、AIの「眼」となる分野でも日本の技術力が光る。
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