豊田自動織機の株主総会は会社提案がすべて可決、株主からはTOB価格へ不満の声相次ぐ

豊田自動織機が10日に開いた定時株主総会で、出席した株主からトヨタ自動車などトヨタグループが計画している豊田織の株式公開買い付け(TOB)価格に対する不満の声が相次いだ。
豊田織の高浜工場(愛知県高浜市)で開催された総会では、TOB価格が発表直前の終値を大きく下回ったことを受け、株主からは買付価格が安すぎるとの指摘や妥当性を問う質問が出た。議長を務めた豊田織の伊藤浩一社長は買い付け価格の1万6300円は同社の本源的価値を十分に反映したものとの考えを改めて示した。
また、4月下旬に買収・非公開化の計画が報道されたことで市場価格がゆがめられたのではないかという株主に対して、伊藤社長は「私どもも同じように感じている」と述べた。限られた人数で検討してきた情報が漏れたのは「非常に残念」だとし、今後は社内での情報管理をさらに厳格化することで再発防止に努めていく考えを示した。
トヨタなどが3日に公表した豊田織の買収・非公開化計画を巡っては、買い付け価格が発表直前の株価を約11%下回る水準となったことを受け、市場で失望の声も広がっている。先週にはアクティビスト(物言う株主)として知られる香港のヘッジファンド、オアシス・マネジメントが豊田織株とトヨタ株の保有を明らかにし、TOB価格引き上げを求めていく方針を示しており、今後のトヨタグループ側の対応が注目される。
豊田織の株主総会では非公開化が会社の情報発信や地域とのつながりに及ぼす影響を懸念する声も出た。伊藤社長は非上場企業となってもボランティアなど地域の活動は継続し、情報発信をしっかり行うことで顧客や取引先とも良好な関係構築を図っていく考えを示した。
株主総会では伊藤社長らの取締役選任など会社側が提出した議案は全て可決された。一方、仏ファンドのロンシャン・SICAVが資本コストを意識した経営の実現などを求め、取締役の過半数を社外取締役にするための定款変更や取締役への譲渡制限付き株式の付与など3つの提案を行ったが、いずれも否決された。
著者:稲島剛史
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら