格安SIMブランド47.7%の裏側。純粋なMVNOは2021年から横ばい、サブブランドが成長をけん引する実態
「正直に言って、大手キャリアはもう格安スマホ事業者を競争相手として見ていないのかもしれない」
イオンモバイルを運営するイオンリテールの井原龍二氏は、大手キャリアの値上げを受けてこう語った。2014年の格安SIM元年から10年経っても、純粋な格安スマホ事業者のシェアが大きく伸びていない現実への率直な反省だ。
生き残りをかけた3つの独自戦略
しかし、そんな厳しい環境下でも、独自の価値創造で活路を見出す格安スマホ事業者たちがいる。彼らに共通するのは、大手キャリアが手を出さない(出せない)領域で勝負していることだ。
「私たちはユーザーのことを『ファン』と呼んでいます」
オプテージの松田守弘氏は、134万回線を擁するmineoの特徴をこう説明する。2024年6月にサービス開始10周年を迎えた同社は、コミュニティサイト「マイネ王」を通じて、コアファン4000人、ライトファン20万人という厚いファン層を築いている。

ユーザー同士がQ&Aで助け合い、新サービスのアイデアを投稿する「アイデアファーム」には日々提案が寄せられる。スタッフブログでは開発の裏側を公開し、ファンとの距離を縮める。まるでSNSのような通信会社だ。
2023年11月に大阪・京橋で開催したイベントには、現地2738人、オンライン3万6287人が参加する盛況ぶりだった。「マイネオ音頭」を踊り、ユーザーが経営する飲食店がフードトラックを出店。参加者のマイネ王訪問頻度は1.8倍に増加した。

こうしたコミュニティ戦略は着実に成果を上げている。アイデアファームに集まった提案は、新サービス開発の源泉となっている。2025年3月には50GBプラン(月額2948円)を投入。夜間フリーやパケット放題プラスなどのオプションも無料で使える。
さらに、最大5Mbps(従来3Mbps)に速度を制限する代わりに月額2200円でデータ使い放題となる「マイそくプレミアム」では、平日12〜13時の速度を32kbpsから200kbpsに改善。これは「お昼休みにPayPayなどのコード決済を使いたい」というユーザーの切実な要望に応えたもので、32kbpsでは表示できなかったQRコードが200kbpsなら実用的に使えるようになった。ファンの声を反映したサービス改善を続けている。
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