《ガラパゴスは入島税3万円》《マチュピチュは入場制限》 海外の有名観光地「混雑対策」の実情
コロナ禍が収束し旅行者が増えたことから、2024年6月にはサーキットをさらに細分化し人流の分散を図っている。
チケットはオンラインで日にちや時間を事前予約して購入する。筆者は訪問予定日の5日前に買おうとしたがすでに売り切れており、マチュピチュ村で配布される枚数限定の前日予約券を求めて列に並んだ。
訪れたのは2024年10月。オンシーズンだったがいくつかの写真スポット以外は混雑もなく快適だった。
いかに「導線」をつくるか
日本に限らず、コロナ禍後のオーバーツーリズムは各地で発生している。SNSなどで情報が拡散し、「映え」を求めて人が押し寄せることも一因だろう。
日本から返還されたパンダも暮らす四川省の成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地は、あまりの混雑ぶりに2023年4月に入場制限とチケットのオンライン事前購入を導入した。現地にチケット売り場はなく、事前に電子チケットを買っておかないと入場できない(過去記事:「中国パンダ基地」空前のブームに沸く現地の様子)。

自国民が殺到するような観光地は、外国人価格を取り入れても混雑対策の効果がなく、マチュピチュ式となるのだろう。
世界を旅行して感じるのは、SNSやグーグルマップのおかげで事前に計画を立てなくてもその場の思いつきで行動しやすくなっていることだ。宿で朝食を食べながらスマホを眺め、写真が魅力的だったり、レビューがたくさんついていて、価格が手ごろで予約不要なら「じゃあ行ってみようか」となる。
筆者もそんなノリで観光地を訪れ、事前知識がないのでただ写真を撮って終わり、ということが時々ある。
一方で「無料」につられて訪れて、新たな発見を得られることもあった。スペインのプラド美術館やソフィア王妃芸術センターは、無料で入館できる時間を設けている。ソフィア王妃芸術センターにはピカソの代表作「ゲルニカ」が展示されており、「ゲルニカが見られるなら」と行ってしまうのが、そこまで芸術に関心のない観光客の典型的な心理だ。
筆者もその1人だったが、プラド美術館の各作品には背景となった社会事情や歴史の解説が添えられ、スペインという国や芸術が果たした役割への理解が深まった。無料開放時間は短いので、「次はお金を払ってゆっくり見よう」と思った。
オーバーツーリズム対策のカギは、「思いつき」で来る人にどう対処するかだろう。海外の観光地は「市民」「非市民」といった人の属性だけでなく、「時間」「施設」などさまざまな二重価格によって観光客の分散を図っている。
軽装で富士山に登り救助される外国人が続出しているように、十分な準備をしていない観光客がもたらすリスクに対処し、観光客の満足度を高め、「恩恵」を地元に還流させるような、戦略的な動線づくりが求められているのではないか。
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