「なぜ今、香取慎吾だったのか?」騒動に揺れるフジテレビで、主演ドラマが放送される“意味”…『日本一の最低男』は、あまりにも《香取慎吾の歩み》と重なる部分が多すぎる
この作品以降、三谷作品で香取は、個性あふれる人たちに振り回されつつも、その場をまとめる常識人を多く演じることとなった。ドラマ『HR』(2002年)然り、映画『THE有頂天ホテル』(2006年)然り。
普通の彼が、大きな包容力で振り回され、物語を「あるべきオチ」へと導いていく姿は爽快だった。
三谷幸喜と香取慎吾の出会いは、ドラマ『スペシャル 古畑任三郎 vs SMAP』(1999年)。
「(世間で見られている末っ子キャラと)全然違うなと思った。そういう面もあるけれど、彼はもっとクレバーで演出家の一面もあるから割と下手に出ながらみんなをリードしていく。そんな感じの方だった」
と三谷は回想している。
なるほど、コミュニティの中で、一歩下がり、仲間のために奔走する。ときには空回りもするが、愚痴りながらも行動する。マイノリティ側、マジョリティ側を自在に行き来できる、彼の「大きさ」の魅力は、そこからきているのかもしれない。
『日本一の最低男』の一平も、強引なようで振り回される側だ。がっしりとしたガタイからはありありと、不満が溢れ出る。しかし愛や犠牲を背負う覚悟もその倍、押し寄せてくる。なんというか、「気持ちの見晴らしがいい」たたずまいである。
香取慎吾は主役ではあるが、同時に「土台」でもある。わかりにくいたとえかもしれないが、「ヤマザキ春のパン祭り」でもらえる、あのフランス製の白い皿に似ている。シンプルで、とても強い。叩かれても割れず、どんなストーリーを乗せても受け止め、加工ナシで「映え」させるのである。

アイドルから「ショーマン」へ
もう1つ、香取の魅力を押し上げているのが、歌。『日本一の最低男』の主題歌「Circus Funk」も、札幌在住のバンド「Chevon」とコラボレーションした意欲作だ。昨年12月11日、「FNS歌謡祭」に出演し、SNSでもトレンドに入るほど大きな話題になった。
まさに、秘密の舞踏会に迷い込んだような興奮!
無料会員登録はこちら
ログインはこちら