「なぜ今、香取慎吾だったのか?」騒動に揺れるフジテレビで、主演ドラマが放送される“意味”…『日本一の最低男』は、あまりにも《香取慎吾の歩み》と重なる部分が多すぎる

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そして、第10話「なんでそこまでやんなきゃいけないの? 一平さんが」と問われ、一平は静かにこうつぶやくのだ。

「なんでやんないんだよ、俺が。俺じゃん、どう考えても」

11年ぶり、テレビ斜陽のこの時代、しかもこのタイミングで、大騒動に揺れるフジテレビに戻ってきた香取慎吾がこのセリフを言う。意図しているのか、自然とそうなったのかはわからないが、回が進むごとに「なぜ今、香取慎吾なのか」の答え合わせができていくような展開に、心が熱くなる。

日本一の最低男
最終回、香取演じる一平は区長選へ出馬する(画像:フジテレビ『日本一の最低男』公式サイトより)

香取慎吾に「振り回される役」を与えた三谷幸喜

ドラマを見て改めて思うが、香取はとにかく大きい、いや、「デカい」。少しのことでは揺るがない、あのたたずまいは唯一無二だ。しかし表情は子どもがそのまま大きくなってしまった無邪気さが残り、そのギャップも強烈なインパクトとなっている。

その個性は昔も変わらず、根っからの陽キャラながら、どこか狂気も感じたものだ。そのせいか、香取が10〜20代の頃は、エキセントリックな役柄が多かった。

『沙粧妙子-最後の事件-』(1995年、フジテレビ系)の殺人鬼・谷口光二役は印象深い。ヘリウムガスを吸い、高い声で叫ぶシーンはいまだに脳裏に残っている。ショッキングな展開が話題となった野島伸司脚本『未成年』(1995年、TBS系)の、知的障害をもつ心優しきデク役も印象深い。

しかし、2000年、「ヘンな人の中にいる普通の人」という逆のポジションをあてがったのが、三谷幸喜。ドラマ『合言葉は勇気』である。

産業廃棄物処理場建設の決定を覆すため、売れない役者をニセの弁護士に仕立て上げ、村が一丸となって戦う物語だ。

主演は役所広司で、香取は、村役場職員を演じた。もうもう、“普通のあんちゃん”の役である。当時、すでにSMAPとして国民的大スターだったが、そのカリスマ性を上手に抑え、物語に溶け込んでいて、すごく新鮮だった。

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