スマホで桜の健康診断──キリンビールの挑戦 「お花見文化」を未来へつなぐ、市民参加型のデータ収集プロジェクト

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晴れ風 桜AIカメラ
キリンのビールブランド「晴れ風」から「桜AIカメラ」というWebサービスが登場した(筆者撮影)
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「お花見」という日本の風物詩が、将来消えてしまう可能性がある——。こう聞いて驚く人も多いだろう。実は今、戦後復興期に全国に植えられた桜が一斉に高齢化し、維持管理が難しくなっている。そんな社会問題に対して、「お花見で桜を撮影する」という多くの人が無意識にしている行動を活かして課題解決に取り組んでいるのがキリンビールだ。

同社は、ビールブランド「晴れ風」のキャンペーンの一環として、2025年3月17日に「晴れ風ACTION 桜AIカメラ」というWebサービスをリリースした。「晴れ風」は2024年4月に発売された新しいブランドで、「日本の風物詩を守る」をテーマに社会貢献活動を展開している。今回の「桜AIカメラ」は、そうした活動の一歩先を目指した試みだ。

戦後植樹された桜の一斉高齢化という課題

日本の桜は今、深刻な危機に直面している。日本樹木医会副会長の和田博幸氏によると、戦後の復興期に日本中で植えられた多くの桜が現在樹齢70〜80年を迎え、全国で一斉に高齢化が進んでいるという。

すべての桜が健全な状態を保っているわけではなく、樹齢とともに元気度が衰退している。特に近年の気候変動による夏の猛暑や干ばつは老木にとって厳しい環境となっている。さらに、管理面での課題も大きい。桜は枝が横に広がる性質があり、日陰を作りすぎたり落ち葉の処理に手間がかかるなどの理由から、必ずしも環境が良いとは言えない状況だ。

すでに倒木事故も発生している。三重県四日市市では川沿いの堤防に植えられた桜が倒れ、調査の結果、他にも危険な木があることが判明してお花見が中止された。神奈川県相模原市や福岡県北九州市でも倒木の危険がある桜の木が伐採されている。

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