【日本は有事に弾薬を確保できる?】ウクライナ侵攻が露わにした防衛産業の「サプライチェーン危機」。ロシアは武器の「買い戻し」も

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ウクライナ空港を破壊した戦車
日本と世界の武器事情について解説します(写真:Oleksandr/PIXTA)
ロシアのウクライナ侵攻によって、装備品・弾薬供給の脆弱性が露わになったが、これは日本にとって対岸の火事ではない。国内外の防衛問題に詳しい防衛省防衛研究所主任研究官の小野圭司氏に、日本と世界の武器事情について解説してもらう。
※本稿は『防衛産業の地政学 これからの世界情勢を読み解くための必須教養』から一部抜粋・再構成したものです。

世界を二分する「NATO規格」と「旧ソ連規格」

世界で流通している武器には、大きくNATO規格と旧ソ連規格の2つがある。小銃・機関銃だけでなく、戦車砲・野戦砲や艦砲の口径が異なる。例えば主力野戦砲の口径はNATO規格が155mm、旧ソ連規格では122mmか152mmである。戦車砲であればNATO規格は105mm施条(ライフル)砲、120mm滑腔砲、120mm施条砲で、旧ソ連規格では115mm滑腔砲、125㎜滑腔砲となる。

中東戦争を幾度も経験したイスラエルは、アラブ諸国が装備していたソ連製の戦車を数百両も鹵獲(ろかく)した。これを整備して自国軍に配備すれば、戦車の調達経費と時間が大幅に節約できる。

しかし規格の問題があり、NATO規格を採用しているイスラエル軍の戦車砲弾はアラブ諸国から鹵獲したソ連製戦車の戦車砲では撃つことができない。

そこでイスラエルでは、鹵獲したソ連製戦車の戦車砲をNATO規格のものに換装して自軍に配備した。一部では、火器管制装置(射撃用コンピュータ)やエンジンも西側のものに換装した。これを行ったのは、『世界の主な防衛関連企業(2023年)』(表1‐6)では27位にあるエルビット・システムズの関連企業だ。こうしてイスラエル軍は、図体はソ連製だが主砲や機器はNATO規格という「ハイブリッド」戦車を多数、安価で手に入れた。

『防衛産業の地政学 これからの世界情勢を読み解くための必須教養』P.42-43より
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